では、それぞれの副作用やその対処法をひとつずつ詳しくみていきましょう。
Ⅰ.耐性・依存性形成
多くの抗不安薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は一番の問題です。
ベンゾジアゼピン系は、長期間や大量の服薬を続けたり、主治医の指示を守らないような無茶な使い方を続けると耐性・依存性を起こす可能性が高くなります。
耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事です。最初は1錠飲めば十分効いていたのに、だんだんと心身がお薬に慣れてきてしまい、次第に1錠では全然効かなくなってしまい、2錠、3錠・・・、と服薬量がどんどんと増えてしまうことになります。
依存性というのは、その物質なしではいられなくなってしまう状態をいいます。
耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。
アルコールにも強い耐性と依存性があります。
アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。
また過度の飲酒量を続けていると、次第に常にお酒を手放せなくなり、常にアルコールを求めるようになります、これは依存性が形成されているという事です。
抗不安薬には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べて特段強くというわけではなく、医師の指示通りに内服していれば問題になる事は多くはありません。お酒だって節度を持った摂取であれば、耐性・依存性が問題となることはありませんよね。それと同じです。
耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。アルコールも抗不安薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。
医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。
またソラナックスをアルコールと併用することも危険です。
アルコールと抗不安薬を一緒に使うと、お互いの血中濃度を高め合ってしまうようで、耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。
また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
基本的に抗不安薬というのは、「一時的なお薬」です。ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的な」ものだという認識は忘れないようにしないといけません。長期的に不安を取りたい場合は、抗不安薬ではなくSSRIなどが用いられます。
定期的に「量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう必要ない状態なのに漫然と長期間内服を続けてはいけません。
服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。
Ⅱ.眠気、倦怠感、ふらつき
ベンゾジアゼピン系は、催眠作用、筋弛緩作用があるため、これが強く出すぎると、眠気やだるさを感じます。またふらつきが出てしまうケースもあります。
ソラナックスにも筋弛緩作用や催眠作用があります。一般的に筋弛緩作用は弱めであることが多いのですが、眠気は人によっては強く出てしまうこともあります。
もしこれらの症状が起こってしまったら、どうすればいいでしょうか。
もし内服して間もないのであれば、「様子をみてみる」のも手です。というのも、お薬は「慣れてくる」ことがあるからです。
様子を見れる程度の眠気やだるさなのであれば、1~2週間様子をみて下さい。徐々に自然と副作用が改善してきた、という例は少なくありません。
それでも眠気が改善しないという場合、次の対処法は「服薬量を減らすこと」です。
一般的に量を減らせば作用も副作用も弱まります。抗不安作用も弱まってしまうというデメリットはありますが、副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。
例えば、ソラナックスを1日合計1.2mg内服していて眠気がつらいのであれば、1日量を0.8mgなどに減らしてみましょう。
また、「お薬の種類を変える」という方法もあります。より筋弛緩作用や催眠作用が少ない抗不安薬に変更すると、改善を得られる可能性があります。
ただしどの抗不安薬にも多少なりとも筋弛緩作用や催眠作用があります。余計悪化してしまう可能性もありますので、どの抗不安薬に変更するかは主治医とよく相談して決めて下さい。
Ⅲ.物忘れ(健忘)
ソラナックスに限らず、ベンゾジアゼピン系のお薬は心身をリラックスさせるはたらきがあるため、頭がボーッとしてしまい物忘れが出現することがあります。
実際、ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります(詳しくは「高齢者にベンゾジアゼピン系を長期投与すると認知症になりやすくなる【研究報告】」をご覧ください)。
適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。