エチゾラムは、1984年から発売されている「デパス」というお薬のジェネリック医薬品です。抗不安薬に属し、主に不安を和らげる作用を持ちます。
ジェネリック医薬品というのは、先発品(デパス)の特許が切れた後に別の製薬会社から発売されたお薬の事です。効果は先発品と同等でありつつ、お薬の開発・研究費があまりかかっていないため薬価が安くなっているというメリットがあります。
エチゾラムは抗不安薬の中でも不安を抑える作用が強いため、患者さんからの人気も高く、多くの方に処方されているお薬です。しかし一方で漫然と服用と続けていると耐性・依存性が生じやすいという面もあり、症状に応じて適切に用量調整をしていく事が望まれます。
そのため剤型も、「エチゾラム0.25mg」「エチゾラム0.5mg」「エチゾラム1.0mg」と複数あり、細かく用量を調整できるようになっています。
エチゾラムの各剤型の使い分けについて説明する前に、まずはエチゾラムがどのようなお薬なのかを紹介していきます。
エチゾラムは抗不安薬に属するお薬ですが、抗不安薬には、
ベンゾジアゼピン系抗不安薬
セロトニン1A部分作動薬
の2種類があります。
このうち臨床で用いられているのは圧倒的にベンゾジアゼピン系になります。ベンゾジアゼピン系は服用してすぐに効果が実感でき、また作用もある程度しっかりとあるためです。一方でセロトニン1A部分作動薬は、副作用は少なく安全性に優れるものの作用も極めて弱く、そのためにあまり普及していません。
そしてエチゾラムもベンゾジアゼピン系に属します。
ではベンゾジアゼピン系抗不安薬というのはどのようなお薬なのでしょうか。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、抑制性神経のGABA-A受容体という部位に作用し、GABA-A受容体のはたらきを増強させます。
抑制性神経は、心身の活動を抑制する方向にはたらき、鎮静・リラックス状態を作る神経です。
これによってベンゾジアゼピン系は、
抗不安作用(不安を和らげる作用)
筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす作用)
催眠作用(眠くなる作用)
抗けいれん作用(けいれんを抑える作用)
の4つの作用をもたらします。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬にもたくさんの種類がありますが、ベンゾジアゼピン系はすべてこの4つの作用を持っています。ただしそれぞれの作用の強さはお薬によって異なります。
エチゾラムもこの4つの作用を有しており、それぞれの強さはというと、
強い抗不安作用
強い筋弛緩作用
中等度の催眠作用
弱い抗けいれん作用
となっています(作用の強さに個人差はあります)。
エチゾラムは抗不安作用・筋弛緩作用が強いお薬になります。そのため不安を改善させたり身体をリラックスさせる作用に優れ、患者さんからも人気があります。
作用が強いというのは一見すると良い事のように見えますが、実は一概にそうとも言えません。
ベンゾジアゼピン系のお薬には耐性・依存性がある事が知られています。そして耐性・依存性は、作用が強い抗不安薬ほど起こしやすいのです。
【耐性】
お薬の服用を続ける事で、心身が徐々にお薬に慣れてきてしまう事。
耐性が生じると、最初は少量を飲めば十分効いていたのに、次第にその量では効かなくなってしまい、服用量が増えていく。
【依存性】
お薬の服用を続ける事で、心身がそのお薬がある事に頼り切ってしまうようになり、お薬をやめる事ができなくなってしまう事。
依存性が生じると、お薬が切れると落ち着かなくなったり、動悸や震え・発汗といった症状が認められるようになる。
エチゾラムは全体的に作用が強いため、ついお薬に頼りすぎてしまい耐性・依存性が形成されやすいのです。
またエチゾラムの注意点はもう1つあります。
エチゾラムは作用時間が短いお薬です。服用してから約3時間ほどで効果が最大になり、その半減期(お薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間)は約6時間と報告されています。
半減期はお薬の作用時間と相関するため、作用時間を知る1つの目安になります。エチゾラムの半減期は他のベンゾジアゼピン系抗不安薬と比べても短めです。
作用時間が短いというのは悪い事ではありません。作用時間が短い方がすぐに身体からお薬が抜けるため、細かい用量調節をしやすかったり、お薬が身体に蓄積しにくいというメリットもあります。
しかし一方で作用時間の短い抗不安薬ほど、やはり耐性や依存性が生じやすいという傾向があります。
エチゾラムは、
作用が強い
作用時間が短い
という抗不安薬であり、頼れるお薬ではあるものの、耐性・依存性の形成に注意も必要な抗不安薬なのです。
エチゾラムを服用している中で耐性・依存性を形成させないためには、
出来るだけ服用量を少なくする
出来るだけ服用期間を短くする
ことが大切です。
エチゾラムをはじめとした抗不安薬への依存は、精神科医療の現場でも問題となっており、抗不安薬の中でも耐性・依存性を起こしやすいエチゾラムはとりわけ注意が必要です。
そのため、服用している中で細かく用量調節をしていき、なるべく耐性・依存性が生じないようにといくつもの剤型が用意されているのです。