妊娠中にデパスを服薬している患者さんの現状

・デパスは妊娠中はなるべく服薬すべきではない
・デパス服薬中に妊娠が分かったら出来るだけ中止すべき

このようなことを書いてきましたが、実際の臨床現場では、デパスなどの抗不安薬を服薬したまま出産を迎える方は少なくないのが実情です。

デパスを中断できないのは、ほとんどが「予定外の急な妊娠」のケースです。妊娠が急に判明し、慌ててなんとかデパスの中断を試みるのですが、減らすと精神的に不安定になってしまい、止むを得ずそのまま、というケースです。

では、妊娠中にデパスのような抗不安薬を服薬していて、それが原因で赤ちゃんに悪影響が出てしまうことは実際にあるのでしょうか。

私が今まで診てきた中では、幸いなことにデパスなどの抗不安薬を服薬していたことで明らかな奇形が産まれたり仮死になってしまったりといったケースはありません。デパスで実際に奇形が産まれてしまう、というのはかなり稀だと考えて良さそうです。しかし、「絶対に大丈夫」という保証はありません。

お薬を服薬中の方は、妊娠は計画的に考えましょう。

万が一、抗不安薬を服薬したまま出産し、赤ちゃんに奇形や仮死などの異常があったら、どうなってしまうのか想像してみてください。

仮にそれが抗不安薬を飲んでいたせいでなかったとしても、あなたは「私がお薬なんて飲んでいたから・・・」と一生自分を責め続けるでしょう。これはとてもつらい事だと思います。

こんなことは極力避けるべきなのです。

また、どうしてもデパスを減らせず、服薬を続けながら出産を迎えると決まった場合は、それ以降はむやみに「デパスを飲んでいて大丈夫かな・・・」と心配しないようにしてください。 そのような方針が今のあなたにとって最良だという医師の判断なのですから、その指示に従いましょう。「本当に大丈夫かな・・・」と不安を感じたままでいると、精神症状が悪化しやすくなってしまいます。

せっかく気分を安定させるためにデパスを飲んでいるのに、精神症状を悪化させてしまう思考を自らしてしまうことはもったいないことです。医師との相談で、飲むと決めたのであれば、あとはそれ以上心配をせずに出産に望んでください。

デパスを服薬中に妊娠してしまったらどうすればいい?

デパスを服薬しながらの妊娠は胎児へ悪影響を与える可能性があるため、基本的には推奨されません。そのため、妊娠の予定がある場合や、妊娠してしまった場合はデパスはできる限り中止する方向でまずは考えていきます。

ここでスムーズに中止できれば問題ないのですが、 中止したことで精神状態が悪化してしまった場合はどうすればいいでしょうか。

この場合、まずは胎児への危険性の低い、別のお薬を検討します。例えば、漢方薬で抗不安作用があるものなどは候補に挙がります。また、ベンゾジアゼピン系の中でも作用の弱いものの方が胎児への悪影響も少ないと考えられるため、より弱い抗不安薬へ変更することも方法になります。

他のお薬への変更もできず、どうしてもデパスを中断できない場合はどうすればいいでしょうか?

まずお薬の量は、少なければ少ないほど胎児に届く量が少なくなりますので、精神状態に支障をきたさない範囲内で、最小限の量に減薬を試みます。

あとは服薬を続けるしかありません。

胎児への悪影響はもちろん心配ですが、減らせない以上、仕方ありません。無理に減薬して精神症状が悪化し、それで流産などになってしまうことも問題です。

服薬のメリット(=精神状態が安定する)とデメリット(=お薬が胎児に届いてしまう)を天秤にかけながら主治医としっかり相談して、自身や赤ちゃんにとって最良の選択をすることが大切です。

やはり大切なのは「予防」になります。妊娠してから慌ててるのではなく、抗不安薬などを服薬している間は、妊娠しないよう細心の注意を払うことです。そして、妊娠の予定があるのであれば、それに向けた減薬プランを主治医と考え、余裕を持った減薬をしていくようにしていきましょう。

デパスの妊娠に対する影響は?

妊娠の可能性がある女性がお薬を処方された時、「このお薬って妊娠中に飲んでも安全なのかな?」という疑問は当然沸いてくると思います。

ほとんどのお薬は血液を通じて赤ちゃんにも流れていきますので、赤ちゃんへの影響を考えれば、妊娠中は極力お薬は飲むべきではないでしょう。しかし妊娠中、どうしてもお薬を中断できない、そんな状況も現実にはあります。

お薬の影響で赤ちゃんに悪影響がないかも心配ですが、無理な断薬で精神症状が悪化し、それが原因で流産などが起こるのも心配です。

ここでは、抗不安薬であるデパスの妊娠に対する影響や、臨床現場での実際、継続・中止をどのように判断すべきかについて考えてみます。

デパスの妊婦への投与について、まずは製薬会社が作成している添付文書に書かれている内容を見てみましょう。

添付文書には、

治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること

と記載されています。

難しい言い方ですが、これを分かりやすく言い直すと、

「極力使わないで欲しいけど、どうしても必要と判断されるなら使ってもいいよ」

ということになります。

ではなぜ極力使わないで欲しいのでしょうか。その理由として、

妊娠前期(~3か月)に使用すると動物実験で奇形が多くなるとの報告がされているから。また同系統の抗不安薬であるジアゼパムにおいて、人においても奇形が多くなるという報告があるから。
妊娠後期に使用すると新生児に傾眠、低体温、筋緊張低下、仮死などの報告があるから

と書かれています。

胎児への薬物の危険度は「薬剤胎児危険度分類基準」というFDAが出している基準が一つの目安になります(FDA:アメリカ食品医薬品局。日本の厚生労働省のようなもの)。この基準では、 薬物の胎児への危険度をA,B,C,D,×の5段階に分類しています。

A:ヒト対照試験で、危険性がみいだされない
B:人での危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌(絶対ダメ)

妊婦で人体実験などはできませんので、この分類はあくまでも目安に過ぎません。信頼性は各薬でばらつきが大きいのが現状ですが、一つの参考にはなります。

お薬で「A」や「B」に分類されているものはほとんどありません。ほとんどが「C」「D」「×」のどれかに分類されています。

この基準では、デパスへの評価は行われていませんが、デパスと同系統の抗不安薬は全て「D」に分類されています(D:危険性を示す確かな証拠がある)。つまり、デパスも「D」と考えて対応するのが良いと考えられます。

同系統の抗不安薬というのは、具体的にはベンゾジアゼピン系抗不安薬になりますが、これらが「D」と評価されている理由は、添付文書に書かれている通りです。主に動物実験においてではありますが、催奇形性(奇形が多くなる)の報告があったり、出産時の問題が生じる報告があるためです。

実はベンゾジアゼピン系の催奇形性の有無については専門家によって意見が別れるところで、「催奇形性は無いのではないか」と指摘する専門家もいます。いくらFDAが出している基準だとは言っても、人体実験をやって調査したものではないのですから、「確実に催奇形性がある」と断言は出来ないはずです。

しかし、ベンゾジアゼピン系に眠くする作用や筋肉を和らげる作用があるのは間違いなく、それがある程度の量、胎児の体内に入ってしまうことも間違いありません。となれば胎児に過剰な鎮静をかけてしまう可能性があることは容易に想像できます。

そのため、基本的には妊娠中には使用すべきではないでしょう。

デパス どうしても酒・アルコールを飲みたくなったら

抗不安薬の服用中にお酒を飲んではいけないことは分かった。

でも、どうしても飲みたい・・・
あるいは、職場で飲まなきゃいけない状況にある・・・

こんな場合、どう対処したらいいでしょうか?

対処法を考えてみましょう。

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Ⅰ.我慢しよう

極めて当たり前の工夫になりますが、やはり「我慢」が基本です。お酒を我慢することで病気は早く治ります。

あなたの病気が治ることで喜んでくれる人がたくさんいるはずです。応援してくれる人たちのためにも、何よりも自分の将来のためにも、早く治したいですよね。この気持ちを忘れないでください。

お酒を飲みたくなった時は、「今お酒を我慢すれば、より早く治るんだ」「より早く治れば、みんなも喜んでくれるんだ」ということを思い出しましょう。

お酒を飲むということは、自分の手で病気の治りを遅らせているということです。お酒を我慢するという事は、お薬の効きを安定させ、治療経過を良くするという立派な治療行為のひとつなのです。

頑張って我慢しましょう!
Ⅱ.抗酒剤を使う

あまり知られていないのですが、抗酒剤というものがあります。これは、「お酒を飲めなくするお薬」です。アルコール依存症の治療に使われるお薬ですが、どうしても飲酒したくなってしまう方は、主治医と相談してこういったお薬を併用してみるのも方法の1つです。

抗酒剤にもいくつか種類があるので紹介します。
①.ジスルフィラム(ノックビン)、シアナミド(シアナマイド)

昔から使用されている抗酒剤です。

ノックビンやシアナマイドを飲んでからお酒を飲むと、少量の飲酒で顔面紅潮、血圧低下、心悸亢進、呼吸困難、頭痛、悪心、嘔吐、めまいなどの不快症状が生じるようになります。

これらのお薬はアルコールを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素を阻害することで、アルコールを分解しにくくし、少量のアルコールで体がまいってしまうようにするのです。懲罰的な方法ですが、飲酒する自分を自制したいんだけど、つい欲求に負けてしまう、という人には効果があります。

これらの薬を服用してしまえば、お酒を少し飲んだだけで不快症状が出現しますから、実質、お酒を飲めなくなります。

なお、これらのお薬とお酒は絶対に併用しないでください。危険です。たまに「一緒に飲むとどうなるのかな?」と試そうとする方がいるのですが、絶対にやめましょう。

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②.アカンプロサート(レグテクト)

中枢神経のNMDA受容体を阻害したり、GABA-A受容体を刺激することで「飲酒欲求を抑える」と言われているお薬です。ノックビンやシアナマイドのように懲罰的に飲めなくするのではなく、「飲酒したい気持ちが少なくなる」というものです。

まだ発売されてから浅いため、データの蓄積が少ないお薬ですが、効果はあまり強くはないようです。「あともうひと押しがあれば、お酒を我慢できるんだけど・・・」といった方にはいい適応かもしれません。

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Ⅲ.ドクターストップだと言う

お酒の席などで飲酒を勧められた時は、「医師から飲酒を止められている」と言ってしまいましょう。病名などは言いずらいかもしれませんが、医者のせいにすることであなたが責められる可能性を少なくできます。

残念なことに、お酒を飲まないというだけで「付き合いが悪いやつだ」と悪く評価する人は未だにいたりします。そんな時は、自分のせいではなく医者のせいで飲めないんだと責任を医師になすりつけちゃって構いません。

「次、お酒を飲んだら出勤停止です、って医師から脅されてるんです」「そうなったら誰がお酒を勧めてきたのか、産業医に報告しなきゃいけないんです」くらい言っちゃっても、私が主治医なら全然許可するでしょう。そして、ここまで言えば、たいていの人は無理には勧めてこないでしょう。

無理に飲ませられたら、あなたはその人のせいで出勤停止になります。お酒を無理矢理勧めた人は「治療を故意に妨害した」ことになり、会社や産業医からの警告や処罰を受ける可能性があります。

会社の産業医体制がしっかりしているのであれば、産業医にも事前に相談しておくと、より安心です。
Ⅳ.周囲の協力にしてもらう

飲酒を我慢するのは、自分の意志との戦いになります。でも、人間一人の意志というのは弱いものです。自分の意志だけで折れそうな時は、周囲にも協力してもらいましょう。

周囲の協力って、とても大きいですよ。

家族や恋人、友人などに「治療が終わるまで飲酒はしない!」と宣言して応援してもらえば、一人で頑張るよりもずっと成功する確率は高くなります。
Ⅴ.どうしても、という時は抗不安薬を飲まない事

どうしてもやむを得ない事情があってお酒を飲まなくてはいけない事もあるかもしれません。その際は、アルコールを摂取する前後には抗不安薬は内服しないでください。

その分、不安感が強くなるかもしれませんが、仕方ありません。お酒を飲むのであれば、その代わりその日の不安は悪化する事は了承した上で飲酒しましょう。

不安が増悪すれば、病気の治りがその分遅れてしまう可能性もありますが、それも覚悟の上で飲酒してください。仕方がありません。そうすれば、短期的にはつらいかもしれませんが、耐性や依存性形成、翌朝の倦怠感や過鎮静などのリスクは低くすることができます。

デパスと酒・アルコールの併用実例

このように、抗不安薬とアルコールを併用するデメリットは大きいため、極力併用すべきではありません。私たちも「一緒には飲まないように!」といつも患者さんに指導しています。

しかし困ったことに、こっそりアルコールを摂取してしまう患者さんは後を絶ちません。

元々お酒が大好きで、どうしても我慢できなかったという人から、仕事の接待でどうしても飲まざるを得なかったという人まで理由は様々ですが、併用してしまうケースは少なくないのが現状です。

では抗不安薬とお酒を一緒に飲んでしまうと、実際どうなってしまうのでしょうか。

短期的な害でいうとお酒や抗不安薬の血中濃度が不安定になるため、変な効き方をしたり、効果が残りやすくなったりします。その結果、普通量のお酒を飲んだだけなのに二日酔いになったり、寝坊・遅刻してしまったり、普通量の抗不安薬の内服で、強い眠気や集中力低下が生じたりします。

長期的に見ると、耐性や依存性が形成されやすくなります。耐性が形成されると、効きが悪くなるため、抗不安薬やアルコールの量は更に増えていき、悪循環に入りやすくなります。

それでも併用を続けていると、次第にどの抗不安薬も効かなってしまう可能性もあります。効くお薬がなくなってしまうと、打つ手が無くなってしまい患者さんは非常に苦しむことになります。

一度、依存状態になると、そこから抜け出すのは非常に困難です。アルコール依存症、覚せい剤依存症などの人が、何度も同じ過ちを繰り返してしまうのはみなさんもニュースなどでご存じだと思います。それほど、依存状態から抜け出すのは難しいのです。依存状態になると、人生の大部分を棒に振ってしまいます。依存状態になる事は絶対に避けなければいけません。

そのためには、絶対に抗不安薬とアルコールを併用しない事です。

デパスと酒・アルコールの併用はなぜダメなのか

デパスを服薬中、酒・アルコールなどは飲んでも大丈夫なのでしょうか。服薬治療中でもお酒を飲みたい方は少なくないようで、よく患者さんからこのような質問を頂きます。

結論から言ってしまうと

「抗不安薬の服用中は、極力飲酒すべきでない」

が答えになります。デパスも抗不安薬の1つですから、服薬中はできる限り酒・アルコールを飲まないようにすべきです。

デパスの内服中はなぜ酒・アルコールを飲んではいけないのか、また飲んだらどうなってしまうのか。酒・アルコールを我慢するためにどんな工夫があるのか。

デパスの添付文書を見てみましょう。酒・アルコールとの併用についてはこのように記載があります。

【アルコール(飲酒)】

臨床症状・措置方法 : 精神機能,知覚・運動機能の低下を起こすおそれがある。
機序・危険因子  :エタノールと本剤(デパス)は相加的な中枢抑制作用を示すことが考えられる。

デパスとアルコールを併用することは「禁忌(=絶対にダメ)」とまではなっていませんが、「併用注意」という扱いになっています。その理由は、お互いに中枢神経の働きを抑えるはたらきがあるため、両方を一緒に服薬するとその作用が相加され、眠気や注意力低下、判断力低下などが起きやすくなるためです。

デパスは抗不安薬に属し、不安を和らげるはたらきを持つ他、催眠作用(眠くする作用)や筋弛緩作用(筋肉の緊張を緩める作用)を持ちます。また、アルコールも鎮静作用を有し、眠気を引き起こしたり、ふらつき・歩行困難などを生じさせることは成人の方であれば経験からご存じでしょう。

どちらも、似たような作用を持っている一面があり、そのため抗不安薬とアルコールを併用すると、これらの作用が強く出てしまう可能性が高くなるのです。具体的には、脳を過剰に眠らせてしまったり、ふらつきや転倒の原因となったり、集中力低下・注意力低下の原因になったりします。眠気強くなったり、注意力・集中力低下が著しくなり過ぎれば、日常生活に大きな支障をきたすのは想像に難くありません。

また、抗不安薬とアルコールの併用で生じる問題はこれだけではありません。抗不安薬とアルコールを併用を続けていると、長期的にも大きな問題を引き起こすこととなります。

それは「耐性形成」「依存性形成」と呼ばれるものです。抗不安薬もアルコールも、どちらも耐性や依存性を持つ物質です。

耐性とは、ある物質を摂取し続けると次第に身体が慣れてきて、効かなくなってくる事です。アルコールは耐性形成を持っており、飲酒を続けているとだんだん少しの量では酔えなくなり、飲酒量がどんどん増えていくのはみなさんもご存じだと思います。抗不安薬もアルコールと同様に耐性形成を起こす物質です。

依存性とは、ある物質を摂取し続けていると次第にその物質なしではいられなくなる現象です。アルコールを大量に長期間摂取していると、次第にアルコールを常に求めるようになってしまいます。我が国のアルコール依存症患者は80万人、アルコール依存症予備軍は440万人と言われており、アルコール依存は社会的にも大きな問題となっています。そして抗不安薬も、アルコールと同様に依存性があります。

抗不安薬は、医師の指示のもとで用法を守って使用していれば、そこまで依存が問題となることはありません。同様にアルコールも節度を持った飲酒をしていれば、依存症になることは極めてまれです。しかし、抗不安薬とアルコールを併用してしまうと、お互いの作用が強まり合い、より急速に耐性や依存性が形成されてしまう危険があります。

アルコールと抗不安薬は交叉耐性を持っていることが指摘されています。これは片方の物質で依存が形成されると、もう一方の物質でも依存形成がされてしまうというものです。相互に作用する事でお互いの血中濃度に影響を与えてしまい、実際より多くの量を摂取したのと同じ状態にしてしまうため、急速な耐性・依存形成が起こるのです。つまり、抗不安薬とアルコールを一緒に飲んでいると、アルコール依存や薬物依存になりやすくなるということです。

また、抗不安薬とアルコールがお互いの血中濃度を不安定にしてしまうという事は、抗不安薬を処方した医師が薬の効果を予測できなくなってしまう、という事でもあります。例えば、「この患者さんには、これくらい効く抗不安薬がちょうどいいはず」と医師が考えて、適切な抗不安薬を処方したのに、アルコールを併用してしまうと効果や作用時間が不安定になってしまい、予測した効果が得られなくなってしまいます。

これが治療に支障を来たすのは明らかでしょう。抗不安薬とアルコールを併用していると、お薬の効きを不安定にし、その結果として病気が治りにくくなり、治療により時間がかかるようになるのです。

抗不安薬と酒・アルコールを併用すると、互いの血中濃度を不安定にしてしまう。すると、脳を過剰に鎮静させてしまったり、強い眠気・注意力低下の原因となる。長期的に見れば耐性・依存性がより急速に形成される事となり、アルコール依存・薬物依存になりやすくなる。また、効きが不安定になるため治療にも支障をきたし、疾患も治りにくくなる

という事です。

抗不安薬やアルコールの依存は、社会的にも大きな問題となっています。アルコールと抗不安薬を摂取するという事は、自らの手で自分を依存症にしてしまう行為なのです。これは極力避けるべきです。

デパスで眠気が生じたときの5つの対処法

デパスを服薬していて、困るくらいの眠気が出てしまった場合は、どうすればいいでしょうか。よく用いられる対処法を紹介します。

なお、これらの対処法は決して独断で行わないで下さい。必ず主治医と相談の上で行ってください。

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Ⅰ.様子をみる

あらゆる副作用に言えることなのですが「少し様子をみてみる」というのは有効な方法です。

特に内服をはじめて間もない場合は、身体がまだお薬に慣れていないために副作用が強く感じられる場合があります。

この場合は、1~2週間程度様子をみてみると、お薬が身体になじんでくるため、副作用も徐々に軽くなってくることがあります。

なんとか耐えられる程度の眠気なのであれば、少し様子をみてみるのも良いでしょう。

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Ⅱ.服薬量を減らす

内服する量を減らせば、眠気の程度は軽くなります。

服薬量が減れば効果も弱くなってしまいますが、副作用で困っている場合は検討すべき方法のひとつになります。

なぜならば、副作用が強く出すぎている場合、「薬の量が多すぎる」という可能性があるからです。この場合はお薬の量を減らした方が適量になるため、良い結果をもたらします。

服薬量が今の自分にとっての適正量なのか、定期的に主治医と相談し、服薬量の見直しを行いましょう。

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Ⅲ.服薬時間を変えてみる

服薬する時間を変えれば、眠気が起こる時間をずらすことができます。

例えば、デパス0.5mgを毎食後(1.5mg/日)服薬していたとします。この状態で、午後の眠気で困っているようであれば、昼食後の服薬を中止してみても良いかもしれません。つまり、朝・夕食後にそれぞれ0.5mgずつ服薬する、という事です。

昼食後のデパスがなくなるため、その間の不安感が増悪してしまう可能性もありますが、、試してみる価値はあります。

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Ⅳ.抗不安薬の種類を変えてみる

精神科のおくすりは、効果や副作用の個人差がとてもあります。
患者さんとおくすりの相性というのは軽視できません。

デパスが自分にあまり合っていなかった、という可能性もありますので、
あまりに副作用が苦しいようなら、種類を変えてみるのも手です。

一例ですが、似たような抗不安薬だと、

ワイパックス      : 作用時間12時間、効果強い
レキソタン/セニラン  : 作用時間20時間、効果強い
セパゾン        : 作用時間11-20時間、効果やや強い

(ソラナックス:作用時間14時間、効果中等度)

などがあります。

ただしどの抗不安薬にも眠くなる作用はありますので、
主治医とよく相談して変えるおくすりは選びましょう。

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Ⅴ.睡眠を見直す

意外と見落としがちなのですが、根本の睡眠に問題がないのかを見直し忘れてはいけません。
睡眠の質が悪ければ、日中の眠気が悪化してしまいます。

そもそもが最近夜更かしをしていたりしていれば、それは眠いのは当たり前ですよね。

おくすりを飲み始めて不調を感じると、「くすりのせい!」と考えてしまいがちですが、
「他の原因は本当にないのか?」という視点は必ず持つようにしましょう。

よくあるのが、

最近、睡眠時間が少ない → 睡眠時間を増やす
うるさい、明るいなど寝室の環境が悪い → カーテン、アイマスクや耳栓などの対策をする
ベッドに入ってからマンガを読んだりスマホをいじっている → やめる
寝る前にお酒を飲んでいる → 断酒する
寝る前に食べ物を摂取している → 睡眠3時間前からは胃に負担がかかるものは食べない

などです。

睡眠の質を悪くしてしまう原因があるのであれば、まずはそちらの改善を優先してみてください。

デパスでなぜ眠気が生じるのか

デパス(一般名エチゾラム)は抗不安薬に分類されており、主に不安を和らげる作用を持っています。

デパスは不安を和らげ心身をリラックスさせてくれます。しかしリラックスさせるということは、同時に眠気をきたしてしまうことでもあります。

少々の眠気であればまだ良いのですが、強い眠気が生じて生活に支障を来たすようでは問題です。

なぜデパスを飲むと眠気が生じることがあるのでしょうか。その理由を知るために、まずはデパスの作用について見てみましょう。

デパスは「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」という種類に分類されます。ベンゾジアゼピン系は、脳のGABA-Aという受容体を刺激し、その作用を強めることが主なはたらきです。

GABA-A受容体は「抑制系受容体」と呼ばれており、この受容体が刺激されると脳や身体は鎮静の方向に向かい、具体的には次の4つの作用が認められることが知られています。

抗不安作用(不安を和らげリラックスさせる)
催眠作用(眠くする)
筋弛緩作用(筋肉の緊張を和らげる)
抗けいれん作用(けいれんを抑える)

デパスに限らずベンゾジアゼピン系のお薬は全て、基本的にこの4つの作用を持っています(それぞれの作用の強さは各薬によって異なります)。

そしてベンゾジアゼピン系のうち、抗不安作用に優れるものは「抗不安薬」と呼ばれ、催眠作用に優れるものは「睡眠薬」と呼ばれ、筋弛緩作用に優れるものは「筋弛緩薬」と呼ばれ、抗けいれん作用に優れるものは「抗けいれん薬」と呼ばれています。

デパスはベンゾジアゼピン系の中で、特に抗不安作用に優れるために抗不安薬と呼ばれているのです。

しかしデパスは抗不安作用に優れてはいますが、その他の筋弛緩作用や催眠作用、抗けいれん作用がないわけではありません。

GABA-A受容体を刺激することで、抗不安作用だけでなく、催眠作用も生じます。そして、この催眠作用により眠気が生じるのです。

つまり、眠気の副作用はベンゾジアゼピン系であれば程度の差はあれ、どのお薬でも生じえるということです。

デパスの催眠作用はまずまずの強さであるため、患者さんによってはデパスを睡眠薬として利用する方もいらっしゃるほどです。

デパスの作用機序

デパスは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬です。デパスに限らず、ほとんどの抗不安薬はベンゾジアゼピン系に属します。

ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、先ほど説明した抗不安作用、筋弛緩作用、催眠作用、抗けいれん作用を発揮します。

ベンゾジアゼピン系のうち、抗不安作用が特に強いものが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」になり、デパスもそのひとつです。

ちなみに睡眠薬にもベンゾジアゼピン系がありますが、これはベンゾジアゼピン系のうち、催眠作用が特に強いもののことです。

ベンゾジアゼピン系は、基本的には先に書いた4つの作用を全て持っています。ただし、それぞれの作用の強さはお薬によって違いがあり、抗不安作用は強いけど、抗けいれん作用は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、抗不安作用は弱いけど、催眠作用が強いベンゾジアゼピン系もあります。

デパスは、先ほども書いた通り、

強い抗不安作用
強い筋弛緩作用
中等度の催眠作用
弱い抗けいれん作用

を持っています。

デパスが向いている人は?

デパスは、「効果は強いけども、依存・転倒などの副作用にも注意が必要」といった位置づけの抗不安薬で、ハイリスク・ハイリターンな側面があります。

効果をしっかり感じられるため使い勝手が良く、つい処方されやすいお薬ですが、こういった特徴を踏まえると、他の抗不安薬で効果が不十分であった際の、第二選択の抗不安薬として適しているのではないかと思われます。

まずは効果も副作用も軽い抗不安薬を服薬してみて、それでは効きが不十分であった場合、リスクも高まるけども効果もより強くなるデパスを検討する、というのが良いのではないでしょうか。

また、筋弛緩作用が強いことから、特に高齢者の方や足腰の弱っている方への処方は、慎重に行うべきでしょう。ふらついて転倒してしまうこともありますし、それが原因で骨折などしてしまう可能性もあります。

デパスは、服薬してから血中濃度が最大になるまで約3時間かかると報告されており、決して即効性に優れるお薬ではありません。

「デパスはすぐ効く!」と感じている患者さんもいらっしゃいますが、それは全体的な効果が強いから早く効いているように感じているだけで、血中濃度が最大になるまでの時間で考えれば、もっと即効性のある抗不安薬はあります。

例えば、

・クロチアゼパム(商品名リーゼ)
・ブロマゼパム(商品名レキソタン)
・ジアゼパム(商品名セルシン)

などは、服薬してから血中濃度が最大になるまで約1時間であり、デパスより3倍即効性があるといえます(もちろん、個人差はあります)。

またデパスの半減期は約6時間ほどですので、1日を通して効果を持続させたい場合は、1日3回に分けて服薬する必要があります。

(半減期:お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、お薬の作用時間の1つの目安になる値)

デパスは使われるのはどんな疾患か

2015年5月現在のデパスの添付文書を見ると、適応疾患としては次のように書かれています。

●神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
●うつ病における不安・緊張・睡眠障害
●心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
●統合失調症における睡眠障害
●下記疾患における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張
頸椎症,腰痛症,筋収縮性頭痛

様々な疾患における、不安や緊張、睡眠障害に対しての適応を持っています。また整形外科的疾患(頚椎症、腰椎症)に対する筋緊張の緩和にも適応があります。

ちなみに心身症とは、こころが原因で身体の異常が出てしまう病気の総称です。例えば食生活が悪くて胃潰瘍になるのは心身症ではありませんが、ストレスで胃潰瘍になるのは心身症になります。同じようにタバコで血圧が上がるのは心身症ではありませんが、ストレスで血圧が上がってしまうのも心身症になります。

添付文書には、デパスの適応が難しく書かれていますが、臨床的にデパスを使うのは、要するに様々な原因で不安・緊張が強くなったり、筋肉の緊張が強くなってきている時です。

ちなみに正常な人にでも不安や緊張はあるものですが、そのような「正常範囲内の不安・緊張」には用いません。抗不安薬は正常範囲内の不安にも効果は認めますが、健常者に使っても副作用などのデメリットの方が大きいからです。

不安感があり、医師が「抗不安薬による治療が必要なレベルである」と判断された場合に
デパスなどの抗不安薬が使われます。

デパスの総評

デパス錠は1984年に発売された抗不安薬です。抗不安薬は主に不安を和らげる作用を持ち、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。

デパスは抗不安薬の中でも、強い抗不安作用・筋弛緩作用を持ち、心身をしっかりとリラックスさせてくれます。しかし効果が強い分、依存などの副作用にも注意しなくてはいけません。

不安にしっかりと効果のあるデパスは患者さんからの満足度も高く、処方されやすい抗不安薬です。精神科をはじめ内科や整形外科など多くの科で処方され、恐らく日本で一番処方されている抗不安薬なのではないでしょうか。

まずはデパス錠の総評を紹介します。
【効果】

強い抗不安作用
強い筋弛緩作用
中等度の催眠作用
弱い抗けいれん作用

デパスをはじめとしたベンゾジアゼピン系と呼ばれるお薬には、抗不安作用(不安を取る作用)以外にも、筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)、催眠作用(眠くする)、抗けいれん作用(けいれんを抑える)があります。

ベンゾジアゼピン系のお薬は全て、この4つの作用を持っています。この4つの作用のそれぞれの強さはお薬によって異なるため、各病状にあったものを選びます。

デパスのそれぞれの効果の強さを表すと上のようになります(個人差があるため、あくまで目安です)。

デパスは抗不安作用・筋弛緩作用が強いため、不安を改善させたり身体をリラックスさせるのにとても役立ち、患者さんからの人気も高いお薬です。

筋弛緩作用が強いということは、筋肉の緊張による肩こりなどを改善させてくれるため、精神科のみならず整形外科などでも役に立ちます。しかしこれは、足の筋肉が緩んでふらつきやすいということでもあり、注意も必要です。特に高齢者の方には、安易にデパスを使用してしまうと転倒や骨折の原因になってしまうこともあります。

また、不安を改善する効果が高いのは良いことですが、これは裏を返せばお薬の効果を感じやすい分、お薬に頼りすぎてしまい依存状態になりやすいという事でもあります。

デパスのメリット・デメリットは次のように考えられます。
【良い特徴】

抗不安作用が強く、不安をしっかりと改善させてくれる
筋弛緩作用が強いため、身体をリラックスさせたり肩こりの改善などにも役立つ
催眠作用もまずまずあるため、眠りやすくしてくれる

【悪い特徴】

抗不安効果が強く、半減期も短いため依存になりやすい
筋弛緩作用・催眠作用からふらつき・転倒や骨折の原因となる

デパスの特徴を簡単に言うと、「効果は強いけど、副作用にも注意が必要」なお薬だと言えます。強力な抗不安作用・筋弛緩作用は非常に助かるものですが、反面で依存やふらつき・転倒などの副作用には注意が必要です。

飲めばしっかりと効果を感じられるため、患者さんからの人気も高いデパスですが、良く効くからと気軽に頼ってしまうと、のちのち副作用で苦しむことにもなります。必要以上に多く服薬してしまうと、副作用などの害が多くなってしまいますので、医師と相談しながら必要な量だけの服薬にとどめるようにしてください。

ロラゼパム ジェネリック医薬品の効能は本当に先発品と同じなのか

ロラゼパムは、先発品である「ワイパックス」のジェネリック医薬品になります。

安価なジェネリック医薬品があるのは嬉しい事ですが、一方で「ジェネリック医薬品は本当に先発品と同じ効果なの?」と心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ジェネリック医薬品に対して、

「安い分、質が悪いのでは」
「やっぱり正規品(先発品)の方が安心なのではないか」

と感じる方は少なくありません。

ジェネリックの利点は「値段が安い」ところですが、「正規品か、安い後発品かどっちにしましょうか」と聞かれれば、「安いという事は質に何か問題があるのかも」と考えてしまうのは普通でしょう。

しかし、基本的に正規品(先発品)とジェネリック(後発品)は同じ効果だと考えて問題ありません。

その理由は同じ主成分を用いていることと、ジェネリックも発売に当たって試験があるからです。ジェネリックは発売するに当たって、「これは先発品と同じような効果を示すお薬です」ということを証明した試験を行わないといけません。

これを「生物学的同等性試験」と呼びますが、このような試験結果や発売するジェネリック医薬品についての詳細を厚生労働省に提出し、合格をもらわないと発売はできないのです。

そのため、基本的にはジェネリックであっても先発品と同等の効果が得られると考えてよいでしょう。

しかし臨床をしていると、

「ジェネリックに変えてから調子が悪い」
「ジェネリックの効きが先発品と違う気がする」

という事がたまにあります。

精神科のお薬は、「気持ち」に作用するためはっきりと分かりにくいところもありますが、例えば降圧剤(血圧を下げるお薬)のジェネリックなどでも「ジェネリックに変えたら、血圧が下がらなくなってきた」などと、明らかに先発品と差が出てしまうこともあります。

なぜこのような事が起こるのでしょうか。

これは、先発品とジェネリックは基本的には同じ成分を用いておおよそ同じ薬効を示すことが試験で確認されてはいるけども、100%同じものではないからです。

先発品とジェネリック医薬品は、生物学的同等性試験によって、同じ薬効を示すことが確認されています。しかし「100%全く同じじゃないと合格しない」という試験ではなく、効果に影響ないほどのある程度の誤差は許容されます。この誤差が人によっては明らかな差として出てしまうことがあります。

また先発品とジェネリックは、「主成分」は同じです。しかし主成分は同じでも添加物は異なる場合があります。その製薬会社それぞれで、患者さんの飲み心地を考えて、添加物を工夫している場合もあるのです。

この添加物が人によって合わなかったりすると、お薬をジェネリックに変えたら調子が悪くなったりしてしまう可能性があります。

このため、「先発品とジェネリックは基本的には同じ効果だけども、微妙な違いはある」、というのがより正確な表現になります。

ジェネリックに変更したら明らかに調子がおかしくなるというケースは、臨床では多く経験することはありません。しかし全く無いわけではなく、確かに時々あります。そのため、そのような場合は無理してジェネリックを続けるのではなく、他のジェネリックにするか、先発品に戻してもらうようにしましょう。

ちなみに、「ジェネリックは安い分、質が悪いのでは?」と心配される方がいますが、これは基本的には誤解になります。ジェネリックが安いのは質が悪いからではなく、巨額の研究・開発費がかかっていない分が引かれているのです。

新薬を開発するのには莫大なお金がかかるそうです。製薬会社に聞くところによると数百億、数千億というお金がかかるそうです。先発品が高いのは、このような巨額の研究・開発費が乗せられているのです。

一方でジェネリックは研究・開発はする必要がありません。その分が安くなっているわけで、決して成分の質が悪いから安くなっているのではありません。

ロラゼパムの作用機序

ロラゼパムはどのような機序で不安を和らげてくれるのでしょうか。

ロラゼパムは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬になります。ベンゾジアゼピン系は、脳の抑制系神経に存在するGABA受容体という部位に作用し、GABA受容体のはたらきを増強することで「抗不安作用」「筋弛緩作用」「催眠作用」「抗けいれん作用」の4つの作用を発揮します。

すべてのベンゾジアゼピン系はこの4つの作用を持っているとお話しましたが、ベンゾジアゼピン系の中で特に抗不安作用に優れるものを「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と呼び、ロラゼパムもその1つになります。

ちなみにベンゾジアゼピン系のうち、特に催眠作用に優れるものは「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」と呼ばれます。

同じベンゾジアゼピン系でも、4つの作用のそれぞれの強さはお薬によって異なります。抗不安作用は強いけど、抗けいれん作用は弱いというベンゾジアゼピン系もあれば、抗不安作用は弱いけど、催眠作用が強いというベンゾジアゼピン系もあります。

ロラゼパムは、先ほども書いた通り、

強い抗不安効果
中等度の筋弛緩効果
軽い~中等度の催眠効果
軽い抗けいれん効果

を持っています。

ロラゼパムが向いている人は?

ロラゼパムはどのような方に向いている抗不安薬になるでしょうか。

ロラゼパムはしっかりとした抗不安作用を持つお薬ですので、不安、緊張が強い方には向いているお薬になります。反対に不安感がそこまで強くない場合は、抗不安作用が穏やかなお薬から始めた方がいいかもしれません。

またベンゾジアゼピン系の中では肝臓への負担が少ないため、肝機能が悪い方や高齢者で抗不安薬を使う際には、安全に使いやすいお薬になります。

飲んでから血中濃度が最大になるまで約2時間かかりますが、臨床的な体感としては内服後20~30分ほどで効果を感じられ、即効性にも優れるため、緊張するイベントの前に飲むといった頓服的な使い方もできるのも利点です。そのため特定の状況の時だけ不安を抑えたい、という頓服的な服用をしたい方にも良いでしょう。

ロラゼパムは、半減期(≒お薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間で、作用時間を知る1つの目安になる値)が12時間程度です。個人差はありますが、1日1回の服薬では1日通して効果は持続しません。そのため、1日中効かせるためには1日に2~3回内服する必要があります。実際、添付文書にも1日2~3回に分けて内服するよう書かれています。

ある特定の時間だけ不安を取りたいのであれば1日1回の内服で構いませんが、1日を通して不安を取りたいのであれば、ロラゼパムを1日2回以上に分けて内服しましょう。

例えば、「朝礼で毎日発表するんだけど、その時だけ効かせたい」ということであれば、朝食後だけロラゼパムを内服すればいいのです。そうすれば、朝礼の時にはしっかり効き、夕方ごろには効果がほぼ消失しています。反対に「1日を通してしっかりと不安を取りたい」という事であれば、朝食後と夕食後の1日2回服薬したり、毎食後と1日3回服用する方が良いでしょう。