ワイパックスの舌下投与の意義

ワイパックスのような抗不安薬に即効性を求めるのは、「不安発作が起こってしまった時」でしょう。

発作が起こってしまい、すぐにでもおくすりを効かせたい、こんな時は舌下投与をしてもいいかもしれません。

しかし実はワイパックスは、データ的には舌下投与も普通の投与方法も効果発現の時間は変わらないと言われています。

これはワイパックスを発売しているファイザー社が行った研究結果だという事ですが、データ上はワイパックスは舌下投与しても早く効くわけではない、との事なのです。

であれば、不安発作が起こった時に舌下投与をする意味はないことになりますが、臨床的にはワイパックスの舌下投与は、時と場合によっては検討してもいい方法です。

まず、データ上は普通の飲み方も舌下投与も効きの早さに差がないとの事なのですが、臨床上は、「舌下投与は早く効きます!」という患者さんは一定の割合でいらっしゃいます。

これはもしかしたら「舌下投与したんだから早く効くはず!」という思い込みからきているものかもしれませんが、仮に思い込みであったとしても早く効いて、不安が早くに治まったのは事実ですから、意味があるだと言えます。

不安発作を体験した事のない方には、不安発作の怖さはなかなか理解できないものですが、周りからみると大したことないように見えても、本人は「このまま死んでしまうのでは」という強い恐怖を覚えます。

これを一刻も早く抑えてあげることは大変に意味があることです。

「発作が起こっても舌下投与すればすぐ効くから大丈夫!」という安心感が得られれば、それは普段の不安の改善にもつながり、病気の治りだって良くなる可能性が十分あります。

また、発作時に常に水を持っているとは限りません。水なしでも身体におくすりを吸収させることのできる舌下投与は、外出先など不意の状況で発作が起こったとき、良い服薬方法となります。

ワイパックスの舌下投与は、公に推奨されている方法ではありませんので、普段から行うことはおすすめできません。

発作時に限り、「舌下投与は自分にとっては即効性がある」と感じられるのであれば使ってもいい方法ではないかと思います。

ただし、主治医に必ず相談した上で行ってくださいね。

ワイパックスの舌下投与とは

くすりを飲むとき、通常は「水と一緒に口に含んで飲み込む」という方法が一般的です。

ワイパックスもこの飲み方が一般的なのですが、時々「舌下投与」という飲み方をすることがあります。舌下投与は正式な飲み方ではないため、積極的におすすめするわけではありません。

しかし、いくつかのメリットもある飲み方ですので、知識として知っておく価値はあります。

普通におくすりを飲む場合、水と一緒におくすりを飲み込みます。

この場合、おくすりは胃から腸管へ流れていき、腸管から吸収されて血管に入り脳へ到達して効果が発現します。

舌下投与というのは、文字通り錠剤を舌の下に置く事です。

舌の下に置く事で、舌の血管や口腔粘膜の血管からおくすりが吸収されます。血管に直接吸収されるため、即効性があるというのが舌下投与のメリットです。

つまり、通常の飲み方だと、

口→胃→腸管→血管→脳

という経路なのですが、舌下投与だと

口→血管→脳

という短い経路になるため、その分効果が早く出るのです。経由部位が少なくなるため、舌下投与の方が早く効くことが分かると思います。

本来、舌下投与は「すぐに効いてほしい」という場合に用いられる方法です。有名どころで言うと、狭心症などの心臓の疾患の発作時などに使われます。狭心症発作は、心臓の血管がつまりかけることで生じます。これは早急に心臓の血管を広げる必要があります。正に一刻を争う状態ですね。

ニトログリセリン舌下錠というおくすりが有名ですが、これを舌下投与するとすぐにおくすりの成分は舌の血管から吸収され、数分で効果が出現して心臓の血管が拡張します。

ニトログリセリンの例からも分かるように舌下投与は、「すぐに効いてほしい!」という早急な効果の発現が必要な時には有効な投与方法なのです。

また、舌の下に乗せるだけで身体に吸収されますので、服薬の際に「水がいらない」というのも舌下投与のメリットです。

ワイパックスが向いている人は?

ワイパックスは優れた抗不安作用を持つおくすりですので、
強い不安や緊張で苦しんでいる方には向いているおくすりでしょう。

反対に、不安感がそこまで強くない場合は、
より抗不安作用が弱い抗不安薬から始めた方がいいかもしれません。

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またワイパックスは抗不安薬の中では、肝臓への負担が少ないため、
肝機能が悪い方や高齢者で抗不安薬を使う際には、安全に使いやすいと言えます。

飲んでから血中濃度が最大になるまで約2時間かかりますが、
臨床的な体感としては内服後20-30分ほどで効果を感じられ、即効性にも優れるため、
緊張するイベントの前に飲むといった頓服的な使い方もできます。

特定のイベント時だけなど、ワンポイントで不安を抑えたいという方にも良いでしょう。

例えば、「朝礼で毎日発表するんだけど、その時だけ効かせたい」ということであれば、
朝食後だけワイパックスを内服すればいいのです。

ワイパックスは、半減期(≒おおよそのおくすりの作用時間)が12時間程度です。
個人差はありますが、一回服薬したらだいたい12時間で効果がなくなります。

そのため、1日中効かせるためには1日に2-3回内服する必要があります。
実際、添付文書にも1日2-3回に分けて内服するよう書かれています。

ある特定の時間だけ不安を取りたいのであれば1日1回の内服でも問題ありませんが、
1日を通して不安を取りたいのであれば、ワイパックスを1日2回以上に分けて内服しましょう。

ワイパックスの効き目の強さ

ワイパックスは1978年に発売された抗不安薬です。

抗不安薬は不安感を取る作用があるおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。抗不安薬にはたくさんの種類があり、それぞれ強さが異なります。

ワイパックスはというと、個人差もありますが一般的に不安を和らげる強さは強めで、不安に対する効き目は強いと言えます。

不安に強く効き、「効いている!」という実感も得やすいため、ワイパックスを持っていると安心できる、という患者さんも少なくありません。不安で苦しむ患者さんの大きな助けになっているおくすりです。

ただし、効き目や強さが強いという事は、「つい頼ってしまいやすい」「依存しやすい」ということでもあるため、注意も必要です。

抗不安薬には、たくさんの種類があります。

それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、
どの抗不安薬を処方するかが異なってきます。

抗不安薬の中でワイパックスは、不安を改善する作用(抗不安作用)は強い部類に入ります。

肝臓への負担が少なく、抗不安作用が強い割には副作用が少ないため、
使い勝手がよいおくすりです。


また、半減期(おおそよの作用時間の目安)は12時間ほどで、
内服すると約半日ほど効果が続きます。

ワイパックス離脱症状の対処法

ワイパックスの減薬時に離脱症状で苦しむケースは時々経験します。
ワイパックスを減薬したときに離脱症状が出現してしまったら、どうすればいいでしょうか?

対処法を考えてみましょう。

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離脱症状が起きた場合、取るべき方法は二つしかありません。
「様子をみる」か「元の量に戻す」かです。

そして、どちらを選ぶかの判断基準は、離脱症状の程度が「耐えられるかどうか」です。

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離脱症状は、身体に入ってくるおくすりの量が急に少なくなった反動で起こります。
しかし人間の身体というのは、徐々に適応していく力を持っていますから、
しばらくすれば、少なくなったおくすりの量に慣れてきます。

それまで様子を見れるのであれば、我慢してもよいでしょう。

個人差はありますが、離脱症状のピークは1週間程度で、
これを過ぎると徐々に程度は軽くなってきます。

ただし、中には3か月など長く続くケースもありますので、
無理をして我慢をしないようにしてください。

様子をみれるレベルの軽い離脱症状であれば、少しの間様子をみて、
離脱症状が治まるのを待ってもいいでしょう。

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もう一つの方法は、「元の量に戻す」ことです。
おくすりを減らしたのが原因なので、おくすりの量を戻せば離脱症状は改善します。
当たり前ですね。

まずは元の量に戻して、1-2週間は様子をみてください。

その後、再び離脱症状を起こさないために、
次のいずれかの方法を取りながら再挑戦してください。

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Ⅰ.より緩やかに減量する

減らしていく量を細かく刻めば刻むほど、反動が少なくなり、
離脱症状も起こしにくくなります。

例えば、ワイパックス3mgから1.5mgに減薬して離脱症状が出現したのであれば、
2mgや2.5mg経由してから1.5mgに減らすようにしてください。

専門書によっては「10%ずつ減らしていきましょう」と書いてあるものもあります。
3mg内服しているなら、0.3mgずつ減らしていくということですね。
気が遠くなりますが、ここまで細かく刻めば離脱症状は起こさないでしょう。

ちなみに錠剤では細かい調整ができないため、細かく刻んで減薬するならば
薬局で錠剤を粉砕してもらって粉にするのがおすすめです。

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また、期間も重要です。

例えば、1週間ペースで減薬していって離脱症状がでてしまうのであれば、
2週間や4週間ペースに伸ばしてみましょう。

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Ⅱ.半減期の長い抗不安薬に切り替えてから減薬する

前述したように、半減期の長い抗不安薬の方が離脱症状を起こしにくいという特徴があります。

そのため、半減期の長いおくすりに一旦切り替えてから減薬すると
上手くいくことがあります。

例えば、ワイパックス(半減期12時間)からコントール(半減期10-24時間)に切り替える方法で考えてみます。
ワイパックス1.5mgを服薬していたとしたら、同程度のコントールだと30mgくらいになりますので、
コントール30mgへ切り替えます(細かい用量は主治医の判断によります)。

コントールに慣れるため1-2週間は様子をみます。

その後、コントールを20mg、10mgと減らしていくのです。

ワイパックス離脱症状を起こさないためには?

離脱症状を起こさないためには、離脱症状を起こしやすい状態と
逆の状態になるようにすることです。

離脱症状を起こしやすい特徴は、

半減期が短いほど起こりやすい
効果が強いほど起こりやすい
量が多いほど起こりやすい
内服期間が長いほど起こりやすい

でした。

これと反対の状態を考えてみましょう。

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まず半減期ですが、ワイパックスの半減期は12時間程度です。
12時間というのは決して短い半減期ではありませんので、ここはあまり気にしなくてもいいでしょう。

半減期は患者さんの努力で変える事ができませんからね。
しかし、より半減期の長い抗不安薬にして、少しでも依存形成を抑えたい、という事であれば、
ワイパックスと同程度の強さで、半減期が長いおくすりに変えるのは悪くはありません。

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一般的に半減期の短いおくすりは即効性があります。
即効性があると、「効いている!」という感覚が得られやすいため、患者さんに好まれます。

しかし、それは依存形成しやすく、離脱症状を起こしやすいということでもある、ということは
覚えておきましょう。

反対に半減期の長いおくすりは徐々に効いてくるので「効いているのかよく分からないなぁ」と
感じますが、ゆるやかな分、依存形成は起こしにくいのです。

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また、効果の強さについても、効果の弱いおくすりの方が離脱症状は起きにくいため、
徐々に効果の弱いおくすりに切り替えていくことも有効です。

ワイパックスは不安を和らげる作用は強いため、
同じくらいの作用時間の抗不安薬で、効果が弱めのものというと、

ソラナックス(半減期14時間、効果は中くらい)
バランス・コントール(半減期10-24時間、効果は弱い)

などが候補になります。

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服薬量が多く、服薬期間が長いほど、依存形成や離脱症状につながりますので、
定期的に「ワイパックスの量を減らせないか?」と検討することも必要です。

「最短1ヶ月で依存形成は起きうる」と指摘する専門家もいますので、
少なくとも2週間に1回くらいは、減薬の検討をすべきです。

ただし、調子がまだ不十分であれば無理して減薬する必要はありません。
あくまでも、漫然とのみつづけないように気をつけるべきということです。

ワイパックスの離脱症状の起こしやすさ

抗不安薬はすべて離脱症状を起こす可能性がありますが、

起こしやすさはおくすりによってそれぞれ違います。

離脱症状は、

半減期が短いほど起こりやすい
効果が強いほど起こりやすい
量が多いほど起こりやすい
内服期間が長いほど起こりやすい

と言われています。

ワイパックスは、半減期は12時間とまずまずの長さを持ちますが、効果が強いため、
離脱症状を起こす頻度はやや多い部類に入ります。

特に、高用量(1日3mgなど)を長期間飲んでいる場合は注意です。

ワイパックスの離脱症状

ワイパックスは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬に分類されるおくすりで、不安感を改善するはたらきがあります。

不安を和らげる作用が強く、即効性もあり患者さんからの評判も良い頼りになるおくすりです。

しかし、ワイパックスなどの「ベンゾジアゼピン系」には注意すべき副作用があります。

それは「離脱症状」と呼ばれるものです。

長期間、大量にワイパックスの内服を続けていると、次第に身体がワイパックスに依存してしまい、やめることが出来なくなってしまいます。

この状態で無理にやめようとすると気分が悪くなったり、イライラしたり、頭痛や震え、発汗が出現したりと様々な症状が起こることもあり、これらは離脱症状と呼ばれます。

ここでは、ワイパックスの離脱症状の説明、それぞれの抗不安薬の離脱症状の起こしやすさの比較、離脱症状を起こさないための注意点、離脱症状が生じてしまった際の対処法などについて説明します。

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬はすべて、依存形成を起こす可能性を持っています。

ワイパックスは抗不安薬の中でも効果が強く、「不安が取れた!」という実感を得やすいため、
頼ってしまいやすく、依存になりやすい部類に入ります。

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依存というのは、身体がおくすりが入っている状態に慣れきってしまい、
少しでもおくすりが入ってこないと不調を感じてしまい、いても立ってもいられなくなってしまうことです。
この状態になってしまうと、おくすりを手放せなくなってしまいます。

依存形成された状態で無理にやめたり減らしたりすると、

落ち着きのなさ、イライラ、緊張
頭痛、肩こり
吐き気、悪心、動悸、震え、発汗

などの様々な症状が現れます。

これを「離脱症状」と言います。

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依存や離脱症状は、抗不安薬を飲むと必ず起こしてしまうわけではありません。
必要な期間のみ、必要な量のみの内服であれば起こさないことがほとんどです。

しかし反対に、長期間・大量に服薬を続けていると起きやすいため、
抗不安薬の服薬は医師と相談しながら、決められた量の内服にとどめることが大切です。

頓服としてのワイパックスの使い方

ワイパックスは抗不安薬ですので、頓服として使うのは、
「不安が強くなってしまった時」「不安が強くなる事が予測される時」です。

多い使い方として、

パニック障害などの患者さんが、不安発作が出た時に使う
電車などの人ゴミが苦手な人が、電車に乗る前に使う
上がり症の人が、人前でのスピーチや発表の時に使う
会食が苦手な人が、会食の前に使う

などがあります。

これ以外にも、「不安を一時的に軽減させたい」という場合には使えます。

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ワイパックスは、理論的には、内服してから約2時間で血中濃度が最大になり、
約12時間で半減期を迎え、効果が消えていきます。

効きが最大になるのは2時間かかりますが、内服後15-30分ほどで効果は実感できます。

即効性があるとは言っても、数秒や数分で効くというわけではないので、
例えば不安発作が起こりそうな感じがあればすぐに飲むのがいいでしょう。

スピーチや発表、会食の前に予防的に飲むのであれば、
イベントの30分くらい前に服薬しておくのが確実です。

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頓服として使用する量は人それぞれですが、
1回0.5mg~1mgの間で使う人がほとんどのようです。

2mg、3mgといった高用量を1回で飲むことが絶対にダメというわけではありませんが、
副作用の眠気やふらつきが強くなる可能性があるため、注意が必要です。

必ず主治医と相談して使用する量は決めてください。

頓服としてのワイパックス錠

ワイパックスは、抗不安薬に分類される不安を和らげる作用に優れるおくすりです。

抗不安薬の中でも、即効性があり効果も強めであるため頓服として使われることも少なくありません。「頓服」というのは、症状が出た時や出そうな時だけ、ワンポイントで飲む事です。

頓服というのは、

症状が出た時や出そうになった時だけ、
ワンポイントでおくすりを服薬すること

です。

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例えば、

痛い時だけ、痛み止めを飲む
胃腸の調子が悪い時だけ胃薬を飲む

などが頓服になります。

症状が出た時だけ飲むので、あくまでも「その場しのぎ」の方法になってしまいます。
しかし、症状があまりに苦しすぎる場合は、たとえその場しのぎであったとしても
症状を抑えてあげた方がいいこともあります。

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頓服と反対の飲み方が、定期的におくすりを飲む事です。

精神科で言えば、例えば抗うつ剤などは調子が悪い時だけでなく、毎日決まった時間に飲みます。
内科でもらう血圧のおくすりや糖尿病のおくすりも、症状がなくても毎日決まった時間に飲みますよね。

定期的なおくすりの服薬は一時的な作用は強くはありません。
しかし、一日を通して確実に病気を抑えてくれるというメリットがあります。

その場しのぎにならない、根本的な治療に近くなります。

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定期的に飲む事、頓服として飲むこと、どちらにも一長一短あります。

おくすりは基本的には定期的に飲むべきものが多いですが、
状況に合わせて医師と相談しながら頓服としての使用を考えても良いおくすりもあります。

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頓服は、症状が出そうな時にサッと使うわけですから、

即効性がある事
効果がある程度強い事

が求められます。

効いてくるまでに何時間もかかるおくすりや、
効いているんだか効いていないんだか分からない弱いおくすりは、頓服として適しません。

ワイパックスは、即効性があり効果も強いため、不安をサッと抑える頓服薬としては適しています。

ワイパックスそれぞれの副作用

Ⅰ.耐性・依存性形成

多くの抗不安薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は一番の問題です。

ベンゾジアゼピン系は、無茶な使い方を続けると耐性・依存性を起こす可能性があります。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。最初は1錠飲めば十分効いていたのに、だんだんと身体が慣れてしまい、1錠飲んでも全然効かなくなってしまう、という状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。

アルコールにも強い耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります、
これは依存性が形成されているという事です。

抗不安薬には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べて特段強くというわけではなく、医師の指示通りに内服していれば問題になる事は多くはありません。お酒だって節度を持った摂取であれば、耐性・依存性が問題となることはありませんよね。それと同じです。

耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。アルコールも抗不安薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。

医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

アルコールとの併用も危険です。アルコールと抗不安薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。基本的に抗不安薬というのは、「一時的なお薬」です。

ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです(長期的に不安を取りたい場合は、抗不安薬ではなくSSRIなどが用いられます)。

定期的に「量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう必要ない状態なのに漫然と長期間内服を続けてはいけません。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

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Ⅱ.眠気、倦怠感、ふらつき

ベンゾジアゼピン系は、催眠効果、筋弛緩効果があるため、これが強く出すぎると、眠気やだるさを感じます。ふらつきが出てしまうケースもあります。

ワイパックスにも筋弛緩作用や催眠作用があります。もしこれらの症状が起こってしまったら、どうすればいいでしょうか。

もし内服して間もないのであれば、「様子をみてみる」のも手です。というのも、おくすりは「慣れてくる」ことがあるからです。様子を見れる程度の眠気やだるさなのであれば、1~2週間様子をみて下さい。自然と副作用が改善してくるというケースは少なくありません。

それでも眠気が改善しないという場合、次の対処法は「服薬量を減らすこと」になります。

一般的に量を減らせば作用も副作用も弱まります。抗不安効果も弱まってしまうというデメリットはありますが、副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。

例えば、ワイパックスを1日3mg内服していて眠気がつらいのであれば、1日量を1.5mgなどにしてみましょう。

また、「お薬の種類を変える」という方法もあります。より筋弛緩作用や催眠作用が少ない抗不安薬に変更すると、副作用の改善が得られることがあります。

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Ⅲ.物忘れ(健忘)

ワイパックスに限らず、ベンゾジアゼピン系のお薬は心身をリラックスさせるはたらきがあるため、頭がボーッとしてしまい物忘れが出現することがあります。

実際、ベンゾジアゼピン系を長く使っている高齢者は認知症を発症しやすくなる、という報告もあります(詳しくは「高齢者にベンゾジアゼピン系を長期投与すると認知症になりやすくなる【研究報告】」をご覧ください)。

適度に心身がリラックスし、緊張がほぐれるのは良いことですが、日常生活に支障が出るほどの物忘れが出現している場合は、お薬を減薬あるいは変薬する必要があるでしょう。

ワイパックスの副作用

ワイパックスは1978年に発売された抗不安薬です。抗不安薬は文字通り、不安感を取るおくすりで、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。

ワイパックスは強い抗不安作用を持ち、患者さんからの評判も良いおくすりです。

その効きの良さから、処方する精神科医も多く、私自身も使う頻度は少なくありません。

不安感に対して強く効いてくれるのは良い事なのですが、効きが良いぶん、若干「クセになりやすい」「依存しやすい」という面もあります。ワイパックスは副作用に気を付けて使用しなければいけません。

ワイパックスは特別に副作用が多いというお薬ではありません。しかし効きがしっかりしているために、つい頼ってしまいやすいお薬であり、依存形成を起こさないように注意が必要です。

ワイパックスはベンゾジアゼピン系というタイプに属するお薬です。ベンゾジアゼピン系はすべて、医師の指示を守らずに長期・大量に服薬を続けていると「耐性形成」「依存性形成」が生じる可能性があります。

耐性とは、そのお薬に徐々n慣れてきてしまい、お薬の効きがだんだんと悪くなってきてしまう事です。依存性とは、そのお薬をを手放せなくなってしまう。飲まないといても立ってもいられなくなってしまう、という状態です。

ベンゾジアゼピン系はどれも耐性・依存形成を起こす可能性がありますが、ワイパックスは特に注意する必要があります。必ず医師の指示を守って、決められた量の内服をしてください。

また、ベンゾジアゼピン系は、

抗不安作用(不安を和らげる)
催眠作用(眠くする)
筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)
抗けいれん作用(けいれんを抑える)

という4つのはたらきがあり、ワイパックスにもこれらのはたらきがあります。

これらそれぞれの強さはお薬によって異なり、ワイパックスはと言うと、

抗不安作用は強い
催眠作用は弱め~中くらい
筋弛緩作用は中くらい
抗けいれん作用は弱め

といった強さをそれぞれ有します。

そして、これらの作用に関連した副作用が時に生じます。

具体的には、

催眠作用で眠気やふらつきが生じる
筋弛緩作用で、ふらつき、転倒が起こりやすくなる

などです。

ワイパックスの作用機序

ワイパックスは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬です。ワイパックスに限らず、ほとんどの抗不安薬はベンゾジアゼピン系に属します。

ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、抗不安効果、催眠効果、筋弛緩効果、抗けいれん効果を発揮します。

ベンゾジアゼピン系のうち、抗不安効果が特に強いものが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」になり、ワイパックスもそのうちのひとつです。

ちなみに睡眠薬にもベンゾジアゼピン系がありますが、これはベンゾジアゼピン系のうち、催眠効果が特に強いもののことです。

ベンゾジアゼピン系は、基本的には先に書いた4つの効果が全てあります。

ただ、それぞれの強さはお薬によって違いがあり、抗不安効果は強いけど、抗けいれん効果は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、抗不安効果は弱いけど、催眠効果が強いベンゾジアゼピン系もあります。

ワイパックスは、先ほども書いた通り、

強い抗不安効果
中等度の筋弛緩効果
軽い~中等度の催眠効果
軽い抗けいれん効果

を持っています。

ワイパックスが向いている人は?

ワイパックスは優れた抗不安作用を持つお薬ですので、不安、緊張が強い方には向いているお薬になります。

反対に、不安感がそこまで強くない場合は、より抗不安作用が弱いお薬から始めた方がいいかもしれません。

抗不安薬の中では肝臓への負担が少ないため、肝機能が悪い方や高齢者で抗不安薬を使う際には、安全に使いやすいと言えます。

飲んでから血中濃度が最大になるまで約2時間かかりますが、臨床的な体感としては内服後20~30分ほどで効果を感じられ、即効性にも優れるため、緊張するイベントの前に飲むといった頓服的な使い方もできます。

ワンポイントで不安を抑えたい、という方にも良いでしょう。

ワイパックスは、半減期(≒お薬の血中濃度が半分に下がるまでにかかる時間で、作用時間を知る1つの目安になる値)が12時間程度です。個人差はありますが、1日1回の服薬では1日通して効果は持続しません。

そのため、1日中効かせるためには1日に2~3回内服する必要があります。実際、添付文書にも1日2~3回に分けて内服するよう書かれています。

ある特定の時間だけ不安を取りたいのであれば1日1回の内服で構いませんが、1日中と通して不安を取りたいのであれば、ワイパックスを1日2回以上に分けて内服しましょう。

例えば、「朝礼で毎日発表するんだけど、その時だけ効かせたい」ということであれば、朝食後だけワイパックスを内服すればいいのです。そうすれば、朝礼の時にはしっかり効き、夕方ごろには効果がほぼ消失しています。

ワイパックスを使う疾患は?

抗不安薬には、たくさんの種類があります。それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、どの抗不安薬を処方するかが異なってきます。

抗不安薬の中でワイパックスの強さというのはどの程度の位置づけになるのでしょうか。

ワイパックスは、不安を改善する作用(抗不安作用)は強めです。

更に肝臓への負担が少なく、抗不安作用が強い割には副作用が少ないため、使い勝手がよいお薬です。

添付文書を見るとワイパックスは、

・神経症における不安・緊張・抑うつ
・心身症(自律神経失調症、心臓神経症)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ

に適応があると書かれています。

心身症とは、身体の異常の主な原因が「こころ」にある病気の群です。例えば食生活が悪くて胃潰瘍になるのは心身症ではありませんが、ストレスで胃潰瘍になるのは心身症になります。同じようにタバコで血圧が上がるのは心身症ではありませんが、ストレスで血圧が上がってしまうも心身症になります。

臨床では、心身症に限らず様々な不安感に対して使用することがほとんどです。

ストレスで不安が強くなったり、気分の落ち込みが出てきたり、緊張が取れなくなってしまう場合などですね。

疾患で言えば、パニック障害や社交不安障害などの不安障害圏、強迫性障害などの疾患には良く使います。うつ病や統合失調症などで不安が強い場合も補助的に使用されることがあります。

また、ワイパックスには筋弛緩作用(筋肉をほぐす作用)もありますので、ストレスが原因で生じた肩こりや頭痛などにも効果が期待できます。