抗不安薬はたくさんの種類があるため、患者さんも自分が飲んでいる抗不安薬がどのような位置づけなのかよく分かっていない事も多いと思います。
ここでは実際の臨床で用いられている代表的な抗不安薬のそれぞれの位置づけを紹介します。
それぞれの抗不安薬の特徴を把握するためには、
抗不安作用(不安を和らげる作用)の強さ
作用時間
の2つの軸で抗不安薬を考えると理解しやすくなります。
なお、実際の臨床で用いられている抗不安薬はほとんどがベンゾジアゼピン系のため、ここでは主にベンゾジアゼピン系抗不安薬の種類と分類について紹介します。
セロトニン1A部分作動薬は「セディール(一般名:タンドスピロン)」というお薬のみあり、これは効果も非常に弱く副作用も非常に少ないというイメージを持っておけば問題ありません。
?
Ⅰ.抗不安薬を強さで分類する
代表的な抗不安薬を、
抗不安作用が強い
抗不安作用が中くらい
抗不安作用が弱い
という3つに分類すると次のようになります。
抗不安作用 商品名(一般名)
強い ・デパス(一般名:エチゾラム)
・レキソタン・セニラン(一般名:ブロマゼパム)
・ワイパックス(一般名:ロラゼパム)
・リボトリール・ランドセン(一般名:クロナゼパム)
・レスタス(一般名:フルトプラゼパム)
中等度 ・ソラナックス・コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
・セパゾン(一般名:クロキサゾラム)
・セルシン・ホリゾン(一般名:ジアゼパム)
・メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)
弱い ・グランダキシン(一般名:トフィソパム)
・リーゼ(一般名:クロチアゼパム)
・セレナール(一般名:オキサゾラム)
・バランス・コントール(一般名:クロルジアゼポキシド)
抗不安薬作用が強いものほどしっかりと不安を抑えてくれますが、強ければ強いほど良いというわけではありません。
一般的に作用が強ければ強いほど、副作用も多くなる傾向があります。またベンゾジアゼピン系抗不安薬には耐性・依存性がある事が知られており、作用が強いほど耐性や依存性も生じやすくなります。
そのため自分の不安の強さに応じて、適切な強さの抗不安薬を選ぶことが大切です。
?
Ⅱ.抗不安薬を作用時間で分類する
抗不安薬を、
作用時間が短い(6時間前後)
作用時間が中くらい(12時間前後)
作用時間が長い(24時間以上)
で分類すると次のようになります。
作用時間 商品名(一般名)
短い ・グランダキシン(一般名:トフィソパム)
・リーゼ(一般名:クロチアゼパム)
・デパス(一般名:エチゾラム)
中等度 ・レキソタン・セニラン(一般名:ブロマゼパム)
・ワイパックス(一般名:ロラセパム)
・ソラナックス・コンスタン(一般名:アルプラゾラム)
・セパゾン(一般名:クロキサゾラム)
長い ・セレナール(一般名:オキサゾラム)
・バランス・コントール(一般名:クロルジアゼポキシド)
・セルシン・ホリゾン(一般名:ジアゼパム)
・リボトリール・ランドセン(一般名:クロナゼパム)
・メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)
・レスタス(一般名:フルトプラゼパム)
?
Ⅲ.抗不安薬の強さ・作用時間一覧
以上の2つの軸である
抗不安作用の強さ
お薬の作用時間
から代表的な抗不安薬を比較すると次のようになります。
抗不安薬 作用時間(半減期) 抗不安作用
グランダキシン 短い(1時間未満) +
リーゼ 短い(約6時間) +
デパス 短い(約6時間) +++
ソラナックス/コンスタン 普通(約14時間) ++
ワイパックス 普通(約12時間) +++
レキソタン/セニラン 普通(約20時間) +++
セパゾン 普通(11-21時間) ++
セレナール 長い(約56時間) +
バランス/コントール 長い(10-24時間) +
セルシン/ホリゾン 長い(約50時間) ++
リボトリール/ランドセン 長い(約27時間) +++
メイラックス 非常に長い(60-200時間) ++
レスタス 非常に長い(約190時間) +++
「半減期」という言葉がありますが、半減期というのはそのお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を知る1つの目安になる値です。実際は半減期だけで作用時間を特定することはできませんが、目安の1つとしては有用です。
抗不安薬を選択するとき、基本的な考えとしては
どれくらいの強さのものを選ぶべきか
どのくらいの作用時間のものを選ぶべきか
という2つの観点から考えます。
強さは、強ければ強いほど良いというものではなく、自分の不安の強さに応じて選ぶべきです。仮に不安を数値化できるとして、あなたの不安が「5」だったら、「5」に近い強さを持つ抗不安薬を選択することが大切です。
不安が「5」なのに「10」の強さを持つ抗不安薬を選んでしまうと、短期的には不安は抑えられるかもしれませんが、長期的には副作用で困ることになります。眠気やふらつき、物忘れなどの副作用が出現しやすくなったり、耐性や依存が生じやすくなってしまいお薬をなかなかやめられなくなってしまう可能性が高くなるでしょう。
反対に不安が「5」なのに「2」の強さしかない抗不安薬を選んでしまうと、不安が十分に抑えられないため、症状がいつまでも改善せず病気も長引いてしまいます。
自分の不安を抑えるのにちょうど良い強さの抗不安薬を選択することが大切です。
また作用時間は、手間や微調整の必要性、安全性などを考えて選びます。
作用時間の短いものはすぐに効果がなくなってしまうため、1日に何回も服薬しなければいけず手間になりますが効果の微調整をしやすいという利点もあります。作用時間が短いものであれば、例えば「日中にだけ普段が強いから日中だけ薬効を発揮させたい」という使い方も可能になります。
また作用時間の短いものの方がサッと効いてサッと消えるため、効果を実感しやすいという面もあります。しかし作用時間の短いものはどちらかというと耐性・依存性が生じやすい傾向もあるため注意も必要です。
一方で作用時間の長いものは、ゆっくり効果が出てくるため、効果を感じにくいのが欠点です。また微調整が出来ないため、副作用が出てしまったらお薬が抜けるまで長時間我慢しないといけません。しかし1日1回の服用などで良いため、手間的には楽になります。また作用時間の長いものの方が耐性・依存性も生じにくいと考えられています。
どちらも一長一短あるため、自分が困っている不安の状態に応じて適切なお薬を選択することが大切です。