リフレックスで太った時の対処法

リフレックスの内服で太ってきたら、どのような対処法があるでしょうか。

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1.生活習慣を見直す

一番大切なことは、生活習慣を見直すことです。

規則正しい生活、適度な運動など生活を改善する行動を続ければ、
たとえ抗うつ剤を内服していたとしても体重は落ちやすくなります。

抗うつ剤は体重が「落ちなくなる」のではありません。
体重が「落ちにくくなる」だけです。
しかるべき行動をとれば、落ちやすくなるのです。

食事は規則正しく3食食べていますか?
量やバランスは大丈夫でしょうか?
間食や夜食など、太る原因になる食行動をしていませんか?

適度な運動はしていますか?
一日一回くらいは、体を動かしているでしょうか?

散歩などの軽い運動でもいいですし、余裕があればジョギングやサイクリングなど
強度の高いものにトライすれば代謝がより改善されます。

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2.抗うつ剤の量を減らしてみる

もし精神状態が安定しているのであれば、 減薬を考えてみるのもいいかもしれません。
主治医と相談してみましょう。

体重増加で困っているのであれば、主治医に相談することは大切なことです。
主治医は、あなたの体重増加を重く捉えていないかもしれないからです。

体重が増えて困るかは人それぞれです。

ガリガリに痩せた男性であればちょっと体重が増えても全然困らないでしょう。
でも、スタイルに気を使っている若い女性にとっては、 体重がちょっとでも増えることは大きな恐怖でしょう。

体重増加に対して主治医とあなたとの間に認識のギャップがある恐れがありますので、
少なくとも自分が困っていることなのであれば、相談してみましょう。

ただし、病状によっては薬の量を減らせないこともあります。

相談の上で、お薬を減らせないという結論になった場合は、
勝手に減らすことはせず、主治医の判断には従ってください。

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3.別の抗うつ剤に変えてみる

別の抗うつ剤に変えてみるという手もあります。

候補に挙がるのは、「太りにくい」という視点だけから見れば
SNRIであるサインバルタ、SSRIのジェイゾロフトあたりでしょうか。

一部の四環系やデジレル、トレドミンなども体重増加の副作用が少なめですが、
これらは抗うつ効果も弱いため、切り替えは慎重に判断しなければいけません。

それぞれの抗うつ剤には長所と短所がありますので、
体重増加の視点だけで考えるのではなく、総合的に判断することが大切です。

やはり主治医とよく相談することですね。

安易にリフレックスのせいにしない事

「精神科のお薬は太る」という認識は、少しずつ患者さんに浸透しているように感じます。

お薬の副作用がしっかりと認知され、好ましいことなのですが、反面、
太ってきたら安易に「あぁ、薬のせいか…」と判断してしまうケースも見られます。

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太ってきてしまった時、それは本当に抗うつ剤のせいなのか、
きちんと見極めることは大切です。

リフレックスを内服していると、太ることはよくあります。
なので、「副作用で太った」と考えるのは間違ってはいません。

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しかし、それだけで終わらせず、「他の理由は本当にないのか?」ということは
必ず考えてみてください。

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例えば、意欲低下や無気力がひどく、まったく動かずに部屋に閉じこもりっぱなしで
スナック菓子しか食べていないのだとしたら、太るのは当然かもしれません。

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果たして本当にリフレックスだけのせいなのか?
他の原因は考えられないのか?

安易に決めつけず、必ず一度見直してください。

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精神疾患にかかっているときは、自分のことを客観視できないこともありますので、
家族に聞いてみたり主治医と相談してもいいと思います。

その上で、副作用で太っているのか それ以外の原因なのかを正しく見極めましょう。

もし、運動不足や過食が原因で太っているのに、 「リフレックスのせい」と決めつけて
内服をやめてしまったらどうなるでしょうか?

気分の不安定が更にひどくなるかもしれませんし、それによって無気力や過食が
更に悪化することも考えられます。

しっかりと見極めないと、そのような悲劇を起こしてしまうことになるのです。

リフレックス 他の抗うつ剤との比較

リフレックスは他の抗うつ剤と比べても太る程度は強いお薬です。

リフレックスやパキシル、三環系は抗ヒスタミン作用が強く、
体重増加も出やすいと言えます。

反面、SNRIは個人差はあるものの、全体的に見ると
体重増加が少ないと言えます。

SNRIにも抗ヒスタミン作用はあるのですが、反面で意欲や活動性を上げる
ノルアドレナリンの濃度を上げる作用も強いため、体重増加が強く出ないのです。
SNRIは逆に痩せてしまう人もいるくらいです。

パキシル以外のSSRIも太る副作用は少なめであると言えます。
とりわけマイルドな効果で定評のあるジェイゾロフトは少なめです。

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抗うつ剤の副作用は個人差が大きく、 実際はこの表通りにいかないこともあります。
あくまでも一般的な傾向として参考にしてください。

なぜリフレックスで太るのか

リフレックスは優れた抗うつ剤ですが、代表的な副作用に「太る」ことがあります。若い女性など、太ることに過敏な方も多く、「太る」副作用はしばしば大きな問題となります。

ほとんどの抗うつ剤は体重を増やす方向に働きますが、その中でもリフレックスの体重増加はとりわけ強いと言えます。

リフレックスには、とりわけ頻度の高い副作用が二つあります。
それは、「体重増加」と「眠気」です。

抗うつ作用に定評のある、いいお薬なのですが、この副作用のせいで、
リフレックスの使用を断念する患者さんは少なくありません。

なぜ、リフレックスは太ってしまうのでしょうか。

これは「抗ヒスタミン作用」というものに原因があります。

抗うつ剤には、ヒスタミン受容体を遮断してしまう働きがあり、
これを抗ヒスタミン作用と呼びます。

リフレックスは、抗うつ剤の中でもトップクラスに抗ヒスタミン作用の強いお薬であり、
そのため、体重増加の副作用も強く出現してしまうのです。

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元々、ヒスタミンには食行動を抑制する働きがあると言われています。
抗ヒスタミン作用を有する抗うつ剤は、ヒスタミンに拮抗して働くため、
食行動の抑制を抑制(=食行動を促進)してしまうということです。

ちなみに抗ヒスタミン剤である、ヒベルナやペリアクチンにも
体重増加、食欲亢進の副作用が報告されており、
やはり、ヒスタミンに拮抗する薬が入ると、食欲は上がることがここからも分かります。

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また、抗ヒスタミン作用で、眠気が起こると、身体も睡眠モードに入るため、
消費カロリーが落ちます。
消費カロリーが落ちると、これも太る原因につながります。

リフレックスの眠気の対処法

リフレックスは抗うつ効果に優れた、非常に良いお薬です。しかし抗ヒスタミン作用は強く、眠気で困る患者さんも多いお薬でもあります。

リフレックスで眠気が生じてしまったら、どうすればいいのでしょうか?対処法について考えてみましょう。

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Ⅰ.様子を見てみる

まだリフレックスを飲み始めたばかりという場合は、少し様子をみてみましょう。

なぜならば抗うつ剤の副作用は「慣れてくる」ことが少なくないからです。半分以上のケースで、副作用は時間が経つと軽減してきます。

特にリフレックスの眠気は、「3日」ほど我慢すると慣れることが多々あります。なぜ3日なのか、というと理由は説明できませんが、事実3日で慣れたケースは多く、私の外来以外でも、多くの医師がこのことは実感しているようです(リフレックスの製薬会社の営業談)

眠気は服薬を開始した翌日がもっとも強く、二日目以降に徐々に改善してきます。3日経つと大分楽になるようです。

何とか様子がみれる程度の眠気なのであれば、少し様子をみてみましょう。まずは「3日」、何とか頑張ってみてください。ヒトのからだの適応力というものは意外とあなどれないものです。

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Ⅱ.増薬スピードを緩めてみる

多くの抗うつ剤は、少量から開始し、1-2週間間隔で少しずつ量を増やしていきます。

それは、急に体内のセロトニン量が増えるとからだがびっくりしてしまい、副作用が現れやすくなるからです。

眠気に関しても同じで、いきなり高容量の抗うつ剤を入れると眠気が出やすくなります。

そのため、副作用をなるべく出さないためには、増薬のペースを緩めてみることは非常に有効です。

抗うつ効果の出現も遅くなってしまうというデメリットもありますが、副作用が軽くなるというメリットがあります。

リフレックスの場合、添付文書には15mgから開始するようにと記載がありますが、15mgで始めるとほとんどのケースで眠気が生じてしまい、苦しむことになります。できれば7.5mg(1/2錠)や3.75mg(1/4錠)から始めましょう。

私自身、よほどの場合を除いて、リフレックスを15mgから始めることはほとんどありません。症例報告などの文献を読むと、2.5mg(1/6錠)から始めるという慎重な先生もいるようです。

まずはこのような少量から開始し、身体がお薬に慣れてきてから、少しずつ増やしていきましょう。

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Ⅲ.睡眠を見直す

そもそもの睡眠に問題がないかを見直すことも忘れてはいけません。

そもそも不規則な睡眠リズムだったり、十分な睡眠時間をとってないのであれば、その眠気は副作用ではなく、リフレックスを飲み始めたことで睡眠の問題が表面化したに過ぎません。

睡眠環境や睡眠時間に問題がないかを見直し、問題があれば安易に薬のせいと決めつけずに問題を解決することを試みてみましょう。

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Ⅳ.併用薬に問題はないか?

併用薬によっては、リフレックスの副作用を強めてしまうことがあります。

例えば薬ではありませんが、よく臨床で経験するのがアルコールとの併用です。酒は、 リフレックスの血中濃度を不安定にし、眠気が強く起こしてしまう可能性があります。この場合は、断酒しない限りは眠気の改善は図れません。

他にもリフレックスの副作用を増強してしまう可能性のあるものとして、エリスロマイシン(マクロライド系抗生物質)、ニゾラール(抗真菌薬)、タガメット(胃薬)などがあります。

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Ⅴ.肝機能・腎機能に問題はないか?

肝機能や腎機能が悪い方は、お薬の代謝・排泄の機能が落ちているため、通常量を投与してしまうと、多すぎる場合があります。

この場合、副作用も通常より強く出現してしまいます。

血液検査や健康診断で肝機能障害、腎機能障害を指摘されている場合、必ず主治医に伝えないといけません。

この場合、障害の程度によっては通常より投与量を少なくするなどの処置を取る必要があります。

リフレックスは尿中に約75%、糞中に約15%排泄されると言われており、ほとんどが腎臓を経由して尿として排泄されます。

そのため、特に腎機能障害を指摘されている方は注意が必要です。

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Ⅵ.服用時間を変えてみる

飲む時間を変えてみる、という方法もあります。リフレックスは添付文書には「寝る前に服用すること」と記載があります。

臨床でもリフレックスはほとんどの患者さんに寝る前に投与していますが、日中の眠気が困る場合は、少し投与時間を早めると上手くいくことがあります。

寝る前ではなく、夕食後投与にすれば、翌日の日中への眠気の持越しは少なくなる可能性があります。

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Ⅶ.減薬・変薬をする

眠気が数週間ガマンしても改善せず、生活に支障を来たしているのであれば、減薬や変薬も考える必要があります。

リフレックスに抗うつ効果を感じているのであれば、薬を変えてしまうのは もったいなくも感じます。この場合は、量を少し減らしてみてもいいかもしれません。

量を少し減らしてみて、うつの悪化も認めず、眠気も軽くなるようであれば成功です。その量で維持していきましょう。

抗うつ効果をあまり感じられず、眠気が強く出てしまっている場合は、別の抗うつ剤に切り替えるのも手になります。

どのお薬に切り替えるかは、主治医とよく相談して決めるべきですが、「眠気が少ない薬」でいうと、 ドグマチールやジェイゾロフト、レクサプロ、サインバルタ、トレドミンあたりが候補に挙がるでしょう。

ただし、どの抗うつ剤も一長一短ありますので、眠気の副作用だけを考えるのではなく、主治医とよく相談してから決めることが大切です。

リフレックスの眠気 -他剤との比較-

リフレックスの眠気は、他の抗うつ剤と比べてどのくらい多いのでしょうか?
各抗うつ剤の眠気の強さを比較してみましょう。

抗うつ剤の中で、眠気が強力なのものは「鎮静系抗うつ剤」と呼ばれています。

鎮静系抗うつ剤の代表格がリフレックスやレメロンといったNassa(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)です。他にもテトラミドやルジオミールといった四環系抗うつ剤、デジレルなども鎮静系に分類されます。

鎮静系抗うつ剤は、眠気が強く出るのがメリットでもありデメリットでもあります。眠気が強すぎると集中力が落ちたり、だるさが抜けなかったりと困ることもあります。

しかしうまく使えば、睡眠薬として利用できますので、不眠を伴ううつ病の方には良い適応になります。

パキシル、レクサプロ、ルボックス/デプロメールといったSSRIも眠気を起こしますが、全体的に軽度な事が多いです。SSRIの中でもジェイゾロフトやレクサプロは眠気が一層軽い印象があります。

サインバルタやトレドミンといったSNRIも眠気は少ないようです。SSRIよりも若干少ないというイメージでしょうか。

SNRIはセロトニンだけでなくノルアドレナリンにも作用します。ノルアドレナリンは意欲や活気を上げる「覚醒系」の物質であるため、 眠気が起きにくいのでしょう。

トレドミンは効果が弱い代わりに副作用も軽いため、眠気はかなり少ないと感じます。サインバルタも効果の割には眠気の頻度は少ないと思われます。

三環系抗うつ剤(トフラニール、トリプタノール、ノリトレン、アナフラニール、アモキサン)も眠気は起こしますが、鎮静系と比べると軽度です。

三環系は昔の抗うつ剤で、SSRIやSNRIと比べると作りも荒いため、副作用は全体的に多く、 眠気はSSRI/SNRIよりは多いと言えます。

ドグマチールも眠気の頻度は少ない抗うつ剤です。ドグマチールには抗ヒスタミン作用やα1受容体遮断作用がほとんどないと言われています。

リフレックスの眠気はなぜ起こる?

抗うつ剤は「眠気」を起こすものが多く、リフレックスも例外ではありません。

これは抗うつ剤がヒスタミン受容体を遮断するために起こる現象で、抗ヒスタミン作用と呼ばれています。

抗ヒスタミン作用を起こすお薬で有名なものにアレルギーや花粉症のお薬があります。眠気が生じるのは、これらのお薬と同じ原理です。

リフレックスは抗ヒスタミン作用が強く、 多くのケースで眠気が生じます。中には出ない方もいますが、眠気を感じる方のほうが多いでしょう。

リフレックスをはじめとした抗うつ剤が眠気を起こすのは、抗うつ剤が「ヒスタミン受容体」と呼ばれる受容体を遮断してしまうためです。

これを「抗ヒスタミン作用」と言います。リフレックスは抗うつ剤の中でも、抗ヒスタミン作用が強いお薬として知られています。

花粉症やアレルギー疾患で使われるお薬に「抗ヒスタミン薬」と呼ばれるものがあります。商品名で言うと、アレグラ、アレロック、タリオン、アレジオン、ザイザルなどです。

「花粉症の薬を飲むと眠くなる」ということは広く知られていますが、これもヒスタミン受容体が遮断されるために起こる現象です。

更に抗うつ剤には、抗ヒスタミン作用以外にもα1受容体遮断作用、5HT2A遮断作用などもあり、これも眠気の原因になります。

αとはアドレナリンのことで、アドレナリン1受容体が遮断されると血圧が低下し、ふらついたり、ボーッとしたりします。(α1受容体遮断薬は降圧剤として使われています。エブランチル、カルデナリンなど)

5HTとはセロトニンのことで、セロトニン受容体のうち、5HT2Aという受容体を遮断すると神経興奮が抑制されます。これは気持ちが落ち着くという良い作用にもなりますが、興奮が抑制されれば、リラックスして眠くもなります。

このような理由でリフレックスは眠気を起こすのです。ほとんどが抗ヒスタミン作用によるものですが、α1受容体遮断作用、5HT2遮断作用なども眠気の一因となっています。

リフレックスの導入例

リフレックスは添付文書には

15mgを1日1回、眠る前に投与から開始して下さい

と記載されています。

しかし、実際は15mgから開始してしまうと、多くの場合で強い眠気に苦しむことになります。

私もリフレックスの発売当初は添付文書通り15mgから開始していましたが、

「一日中眠りこけてしまった」
「身体がだるくて数日動けなかった」

などと患者さんから怒られてしまうことが時々ありました。

なので、7.5mg(半錠)や3.75mg(1/4錠)から開始するのが良いかと思います。

効果の発現は他の抗うつ剤より早く、1週間程度で効果を感じられる方も少なくありません。

内服初期の副作用は、眠気・倦怠感が多くみられます。ただ、不思議なことに「3日」経つとかなり楽になる、という方が多いです。これは何でなのか本当に不思議なのですが、「最初の3日を乗り切ったら眠気がかなり良くなった」という感想を持つ患者さんは少なくありません。

製薬会社の方にこの事をお話ししたところ、同じような印象を持っている先生は多いとのことでした。

眠気や倦怠感は最初の3日を乗り切ると改善する例は多いようです。副作用が出てしまった方も、3日は何とか飲み続けてみるといいかもしれません。

1~2週間様子をみて、リフレックスを続けられそうと感じられたら、15mg→30mg→45mgと徐々に増やしていきます(最大量は45mgです)。増やす間隔は最低でも1週間は空けましょう。

また、必ず最大量まで上げないといけないわけではなく、薬効が十分感じられればその量で上げ止めて構いません。

典型的な経過としては、まずは眠くなるため睡眠が改善され、その後に不安や落ち込み、焦燥感が改善されてきます。更に服薬を続けていくと意欲が改善されてきます。

最大量投与して、1~2か月経過をみても改善が全く得られない場合は、リフレックスが効いていないと考えられますので、別の抗うつ剤に切り替えます。

リフレックスの効果が十分に出て、気分が十分安定したと感じられても、そこから6~12ヶ月はお薬を飲み続けましょう。この時期が一番再発しやすい時期だからです。

6~12ヶ月間服薬を続けて、再発徴候がなく気分も安定していることが確認できれば、その後2~3ヶ月かけてゆっくりとお薬を減薬していき、治療終了となります。

リフレックスが向いている人は?

リフレックスの特徴をおさらいしてみましょう。

効果は強い
眠気と体重増加が起きやすい
他の抗うつ剤の副作用の特徴が違う

ここから考えると、「不眠を伴ううつ病」の方には良い適応だと思われます。眠れるようになるし、憂鬱な気分も改善させてくれるわけですから、うまく効けば、一石二鳥で改善が得られます。

吐き気や胃部不快感、性機能障害といった他の抗うつ剤で見られやすい副作用がほとんどないのもこのお薬の特徴です。このような副作用で苦しんでいる方も、リフレックスを試す価値はあるかもしれません。

反対に、「日中に眠気が出ると困る人」への投与は慎重にすべきでしょう。眠気は日中まで持ち越すこともあります。

リフレックスは非常に良いお薬であり、投与してみたい患者さんは多くいるのですが、日中に作業をする人には投与しずらいというのは大きな欠点です。

社会人や学生など、ほとんどの方は日中に集中力を要する作業をしており、日中に眠気が出たら困る人というのは多いのです。

すでに仕事を休職しており、治療体制が十分整っている方には投与しやすいかもしれませんが、そうでない場合、眠気で集中力や作業効率が落ちて困ってしまうかもしれないし、もっとひどい場合は、朝起きれなくなって遅刻してしまうかもしれません。

そうなると、かえって自分を責めてしまうことにもなりそうですよね。

また、リフレックスは体重増加の頻度が多いお薬ですから、太ることに過敏な方にはあまりお勧めできません。

リフレックスの適応疾患

リフレックスの添付文書には、

うつ病、うつ状態

に適応があると記載があります。

実臨床においても、「うつ病、うつ状態」の患者さんに処方することが多いですが、その他の疾患にも使うことがあります。

不安を改善する作用にも優れるため、パニック障害や社交不安障害といった不安障害にも効果は見込めます。これはセロトニンが増える事が不安の改善につながる他、リフレックスの持つ、セロトニン2C受容体遮断作用にも不安を和らげる効果があるためです。

深い眠りを導いてくれる作用から、不眠症の患者さんに使われることも少なくありません。睡眠薬だけでは効果不十分なときに、有効な一手になります。

また、精神疾患ではありませんが、慢性の掻痒(痒み)に対して、他の痒み止めが無効なときに使うことがあります。これは、リフレックスの抗ヒスタミン作用が痒みを抑える働きがあるからです。

MANGA studyという有名な研究報告があります。この研究は「抗うつ剤の強さや副作用の多さをランク付けしてみよう!」 というものです。

研究結果には賛否両論ありますが、抗うつ剤をランキングする、という前代未聞の試みであったため、大きな反響を呼んだ試験でした。

この試験結果で、「一番効果が高い」と評価されたのがリフレックスです。

有効性とは薬の効果で数字が大きいほど効果が高いことを示しており、忍容性とは副作用の少なさで、大きいほど副作用が少ないことを表しています。フルオキセチン(国内未発売)という抗うつ剤を「1」とした場合の、それぞれの 抗うつ剤の比較です。

リフレックスは有効性だけみればトップに君臨しています。ただ、その分忍容性が低く、「効果は良いんだけど副作用も多いお薬」という位置づけです。

実際、リフレックスという抗うつ剤はこの結果の通りだと感じます。

効果は抗うつ剤の中では抜群、でも副作用も強い

それがリフレックスです。

リフレックスの作用機序

リフレックスは、Nassaと呼ばれるタイプの抗うつ剤に分類されます。

NassaとはNoradrenergic and Specific Serotonergic Antidepressantの略で、日本語に訳すと「ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬」になります。

分かりにくいですよね・・・。まぁ、要するに、

ノルアドレナリンとセロトニンを増やすお薬

ということです。

注目すべきは、Nassaは他の抗うつ剤と違う機序でセロトニンやノルアドレナリンを増やしてくれる、という点です。

三環系や四環系、SSRIやSNRIなどの抗うつ剤は「セロトニンの再取込を阻害する」ことでセロトニンを増やします。セロトニンが吸収(=再取込)されないようにすれば、いつまでもセロトニンが残るので、結果としてセロトニンの濃度が増えていく、という仕組みです。

しかしNassaはセロトニンの分泌自体を増やします。吸収を抑えるのではなく、分泌量を増やすことで、セロトニンの濃度を上げるのです。専門的に言うと、シナプス前部にあるα2受容体を阻害することで、ノルアドレナリンとセロトニンの神経伝達を増強します。

他の抗うつ剤と作用機序が異なるということは、理論上は両者を併用すれば、相乗効果が期待できるということです。

リフレックスでセロトニンの分泌を増やして、SSRIやSNRIで吸収を抑えれば、セロトニン濃度が大きく上がりそう、というのは想像に難くありません。

実際、SNRIであるサインバルタとリフレックスを併用する、という治療が一時期流行りました。この処方は、「カリフォルニアロケット」と呼ばれてます。2剤の相乗効果でロケットのように改善していくことをイメージしてつけられたネーミングです。

リフレックスの特徴

リフレックス(一般名:ミルタザピン)は、2009年にMeiji Seikaファルマ社より販売された抗うつ剤です。

抗うつ剤の中でもNaSSAと呼ばれるタイプになり、これは「ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬」と呼ばれ、主にノルアドレナリンやセロトニンを増やす作用に優れる抗うつ剤になります。

ちなみにMSD社も「レメロン(一般名:ミルタザピン)」というNaSSAを発売してますが、レメロンもリフレックスも主成分は同じお薬です(販売している会社が違うだけで主成分は全く同じです)。

リフレックスの特徴は、他の代表的な抗うつ剤(三環系抗うつ剤やSSRI、SNRIなど)と異なる作用機序で気分を改善させてくれる事です。

そのため他の抗うつ剤があまり効かなかった患者さんでも、作用機序の異なるリフレックスであれば効く可能性があり、うつ病治療の新たな選択肢の1つとなっています。

副作用に少しクセのある抗うつ剤ではありますが、その特徴を理解して正しく使えば非常に大きな助けになる可能性を秘めています。

まずは、リフレックスのイメージをつかんでもらうため、その特徴を紹介します。

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【良い特徴】

抗うつ作用が強い
即効性がある
眠りを深くする作用もあり、不眠にも効果的
他の抗うつ剤と作用機序が違う
口渇、便秘、性機能障害、吐き気といった従来の抗うつ剤で多かった副作用が少ない

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【悪い特徴】

体重増加が生じやすい
眠気が生じやすい

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リフレックスは種々の抗うつ剤の中でも、抗うつ作用が強く、また服用を始めてから効果が発現するまでの期間も短い抗うつ剤になります。

一般的に抗うつ剤は、だいたい2週間ほどは服用を続けないと効果が現れないと言われていますが、リフレックスは服用後数日から1週間程度で効果が現れることもあります。

また、MANGAstudyという研究では、「抗うつ剤の中でリフレックスが一番効果が強い」と結論づけられており、その効果の強さには定評があります。

副作用の現れ方も特徴的です。

三環系、四環系、SSRI、SNRIに見られるような抗コリン作用や性機能障害、胃腸障害がほとんどありません。代わりに眠気と体重増加が出やすいという特徴があります。

ただし眠気は、上手に使えば不眠で困っている患者さんに質のいい眠りを提供できるというメリットにもなります。

NaSSAと他の抗うつ剤との比較

NaSSA以外の抗うつ剤とNaSSAとの比較を紹介します。

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Ⅰ.三環系抗うつ剤(TCA)

三環系抗うつ剤は1950年頃から使われ始めた「最古の抗うつ剤」です。非常に強い抗うつ効果を持つのが特徴ですが、その分副作用も強力です。副作用が多いというだけでなく、命に関わるような重篤な副作用も(稀にではありますが)生じる可能性があります。

NaSSAと比べても三環系には強い抗うつ効果があり、「最後の切り札」としては非常に頼れるお薬です。しかし副作用の問題から極力使いたくないお薬でもあります。

三環系抗うつ剤にもいくつかのお薬があり、

主にセロトニンを増やすもの(アナフラニール)
セロトニンとノルアドレナリンを増やすもの(トリプタノール)
主にノルアドレナリンを増やすもの(トフラニール、ノリトレン、アモキサン)

がありますが、全体的にはノルアドレナリンを増やすものの割合が多めです。

三環系は副作用の危険性を考えると、第一に使うお薬ではありません。一般的に三環系は、NaSSAをはじめとした新規抗うつ剤が効かない難治症例に限って、慎重に用いられるお薬になります。

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Ⅱ.四環系抗うつ剤

三環系の副作用の多さや危険性から、「もう少し副作用の少ないものを」と考えられて開発された抗うつ剤です。

三環系と比べると抗うつ効果が弱く、頼りなさがあります。しかしその分、副作用も少なくなっています。

しかし、四環系は眠りを深くする作用に優れるため、不眠を伴っている場合は役立ちます。現在は四環系は抗うつ剤の主剤として用いられることはほとんどなく、眠りを深くする目的で睡眠薬的に用いられるか、他の抗うつ剤を補助するような目的で投与されることがほとんどです。

実はNaSSAは、この四環系抗うつ剤を改良して作られたお薬です。

四環系の特徴である「眠りを深くする」というメリットを生かしつつ、四環系の欠点である「抗うつ作用の弱さ」を克服したお薬がNaSSAなのです。

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Ⅲ.SSRI

選択的セロトニン再取り込み阻害薬と呼ばれるお薬です。NaSSAと同じく効果と安全性のバランスに優れ、うつ病治療の第一選択として用いられるお薬です。総合的な強さとしてはNaSSAと同じかやや弱めくらいです。

NaSSAはセロトニンとノルアドレナリンを増やしますが、SSRIはセロトニンを中心に増やします。理論的にはセロトニンは落ち込みや不安に効き、ノルアドレナリンは意欲ややる気に効くため、落ち込みや不安が目立つ例ではSSRIの方が良いこともあります。また「眠気が出るのは困る」「お薬で太りたくない」という場合も、SSRIの方が適している事があります。

反対にノルアドレナリンも増やしてあげた方が良いような患者さんや、不眠や食欲低下でも困っていてこれらの症状も改善させてあげたい場合はNaSSAの方が適している事があります。

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Ⅳ.SNRI

「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」と呼ばれるお薬です。

SSRI、NaSSAと同じく効果と安全性のバランスに優れ、うつ病治療の第一選択で用いられるお薬です。全体的な効果はNaSSAよりも若干弱めです。SSRIと異なりセロトニンだけでなくノルアドレナリンも増やしてくれます。

SNRIもNaSSAもセロトニンとノルアドレナリンの両方を増やしてくれますが、SNRIは吐き気や性機能障害の他、動悸・尿閉といった副作用が生じることがあります。これはノルアドレナリンを増やすために生じる副作用です。

一方でNaSSAは体重増加や眠気といった副作用が生じやすく、効果の強さや副作用の特徴を把握した上でどちらの抗うつ剤も用いるかは判断されます。

抗うつ剤の中でのNaSSAの特徴

NaSSAの他にも抗うつ剤にはいくつかの種類があります。この中で、NaSSAはどのような特徴があるのでしょうか。

まず抗うつ剤は大きく2つに分けることができます。

1つ目は三環系抗うつ剤(TCA)を中心とした「昔の抗うつ剤」です。昔の抗うつ剤は効果が強力なのは良いのですが、副作用も強力だという問題があります。特に問題なのが、頻度は多くないものの重篤な副作用が生じる可能性があるという事です。重篤な不整脈が生じたりと命に関わるような副作用が生じる可能性もあります。そのため現在ではこのような抗うつ剤は極力用いないようにし、他の抗うつ剤が効かないなどのやむを得ない時に限って用いる「最後の切り札」となっています。

2つ目がSSRI、SNRI、NaSSAといった新規抗うつ剤です。新規抗うつ剤はしっかりとした効果を有していながら、副作用が少ないという特徴があります。副作用が生じないわけではないのですが、命に関わるような重篤な副作用は極めて稀であり、安全に用いることができます。

このような特徴から、現在のうつ病治療では、

まずは新規抗うつ剤を用いる
古い抗うつ剤は新規抗うつ剤が効かない時のみやむを得ず用いる

という使い方になっています。

このなかでNaSSAは新規抗うつ剤に属しますので、安全性に優れるというのが特徴の1つになります。

また新規抗うつ剤の中では、

抗うつ作用が強い
効果発現が早い
眠気や体重増加が生じやすい
吐き気や性機能障害が生じにくい

といった特徴があります。

NaSSAはどのような疾患に用いるのか

NaSSAはどのような疾患に対して使われるのでしょうか。

NaSSAは抗うつ剤に分類されるため、主な用途はうつ病になります。しかしそれ以外の疾患にも用いられることがあります。

ここではNaSSAを使う疾患の紹介をします。

 

Ⅰ.うつ病

うつ病の原因の全てはまだ解明されていません。しかし少なくとも原因の1つであるだろう事として「モノアミンの減少」が考えられています。

モノアミンとは、

  • セロトニン
  • ノルアドレナリン
  • ドーパミン

などの「気分に影響を与える物質」の総称です。

うつ病はモノアミンの減少によって生じているという考えは「モノアミン仮説」と呼ばれており、現在でも支持されている仮説になります。うつ病の原因はモノアミン仮説だけでは説明できないため、モノアミン以外の原因もあるのだとは考えられますが、少なくともうつ病発症の一因になっている事は間違いないでしょう。

モノアミン仮説にのっとれば、モノアミンを増やすことがうつ病治療につながります。NaSSAはセロトニンやノルアドレナリンといったモノアミンの分泌を直接的に増やす作用があるため、うつ病に対して高い効果が期待できる抗うつ剤になります。

 

Ⅱ.不安障害(不安症)

パニック障害、社会不安障害、全般性不安障害や恐怖症など、「不安」や「恐怖」が根本にある疾患を不安障害と呼びますが、NaSSAは不安障害にも効果を示します。

不安障害の原因もまだ全てが解明されているわけではありません。しかし脳科学の研究によると、不安が高まっている脳においては扁桃体や海馬が過活動となっていることが指摘されています。またセロトニン神経がこれらの過活動を抑えてくれるはたらきがあることも報告されており、セロトニンを増やす作用も持つNaSSAはしばしば不安障害の治療に用いられます。

ただし不安障害はセロトニンの影響が大きいため、SSRIがまずは用いられる傾向にあります。

 

Ⅲ.不眠症

NaSSAの特徴として、眠気を感じるお薬だという事が挙げられます。そのためNaSSAは基本的には寝る前に服用することが多くなっています。

特に飲み始めの眠気は非常に強い事があり、患者さんはこの強烈な眠気にびっくりして、服用をやめてしまう事もあるほどです。

これはNaSSAの持つ「抗ヒスタミン作用」によるものだと考えられています。ヒスタミンは脳の覚醒に関わっている物質です。NaSSAはヒスタミンのはたらきをブロックするため、これにより脳の覚醒レベルが落ち、眠気を感じるようになります。

このような機序のため、NaSSAはしばしば不眠症の治療薬として用いられることもあります。

NaSSAの良いところは、ただ眠気を感じさせるだけではなく、眠りの質を高めてくれる事です。眠りには「浅い眠り(REM睡眠や軽睡眠)」と「深い眠り(深部睡眠)」がありますが、NaSSAは深部睡眠を増やす事が報告されています。これは上記の抗ヒスタミン作用だけではなく、セロトニン2受容体をブロックする作用も関係していると考えられています。

 

 

 

Ⅳ.かゆみ

NaSSAは強い抗ヒスタミン作用を持ちます。ヒスタミンは様々なはたらきを持つ物質で、上記のように覚醒にも関わっていますが、それ以外にもアレルギー反応にも関わっています。

ヒスタミンは肥満細胞(マスト細胞)から分泌されるのですが、過剰に分泌されるとアレルギー症状(かゆみ、鼻水など)が生じることがあります。

抗ヒスタミン作用を持つNaSSAはこのようなアレルギー症状の改善にも用いることができます。