「うつ病」カテゴリーアーカイブ

サインバルタ 妊婦・授乳婦への投与

妊婦への投与は、「やむを得ない場合に限り使用してよい」という位置づけです。精神科のお薬は基本的にはすべてのお薬がこの位置づけになります。

米国FDAが出している薬剤胎児危険度分類基準では、薬の胎児への危険度をA,B,C,D,×の5段階で分類しています。

A:ヒト対照試験で、危険性がみいだされない
B:人での危険性の証拠はない
C:危険性を否定することができない
D:危険性を示す確かな証拠がある
×:妊娠中は禁忌

基本的に精神科のお薬で、「A」「B」に分類されているお薬はなく、「C」「D」「×」の3つのどれかに分類されています。

サインバルタは、このうち「C」です。そのため、極力妊娠中は使わないようにしますが、やむを得ない場合は使用しながら出産を迎えることもあります。

精神的に不安定で、無理に減薬すると流産したり、ストレスから早産・死産になることもあるため、服薬のメリットとデメリットを天秤にかけながら医師と相談して、慎重に判断しましょう。

ちなみに抗うつ剤はほとんどが「C」に分類されていますが、、三環系やパキシルなどは「D」と、危険度が一段階高く分類されています。

もし、三環系やパキシルを内服して妊娠する可能性があるのであれば、「C」の抗うつ剤への変薬をしておいた方が安全です。

サインバルタは他の抗うつ剤と同じく、母乳に移行することが確認されているため、内服しながらの授乳はできません。

どうしても授乳したい場合は、サインバルタの内服を中止し、薬が完全に抜けるまで1~2週間待ってから母乳栄養を開始するようにしてください。

サインバルタの内服を続ける場合は、母乳は投与せず、子供には人工乳を与えてください。

睡眠薬の危険性を見た調査

睡眠薬の危険性を認識するための参考となる、1つ調査報告を紹介させていただきます。

この調査では、医薬品による過量服薬(オーバードーズ)によって死亡してしまった症例を集め、

それぞれにどのような薬が処方されていたのかを調べ、またそれぞれの薬の致死率(危険性)を調べました。
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双極性障害の各原因について

双極性障害の原因として「ストレス脆弱性モデル」を紹介しました。
しかし、これは不完全な原因モデルであり、これだけで双極性障害の原因の全てを説明することは出来ません。

しかし双極性障害の発症に「遺伝」と「ストレス」が関わっているというのは間違いありません。
また「これももしかしたら双極性障害の原因なのではないか」という要素もいくつかあります。

現時点で考えられている双極性障害の原因要素について紹介していきます。

Ⅰ.遺伝

双極性障害の発症原因として、「遺伝」はもっとも大きい要素です。双極性障害には遺伝性があります。

もちろん100%遺伝してしまうというわけではありません。「親が双極性障害だと、自分も必ず発症する」ということにはなりません。
しかし「親が双極性障害だから、自分も双極性障害を発症する可能性が普通よりは高い」というのは事実になります。

双極性障害の発症率は1~2%前後(100人に1~2人)という報告が一般的です。
これが双極性障害の遺伝が関わっている場合、発症率はおおよそ次のように上がると報告されています。

・親の片方が双極性障害であった場合、子供が双極性障害を発症する確率は25%(4人に1人)

・両親がともに双極性障害であった場合、子供が双極性障害になる確率は50~75%

ここから、双極性障害の発症に遺伝が関わっている可能性は高いことが分かります。

双極性障害の家族歴がある方にとってはショックを受けてしまうような事実かもしれません。
しかし、この事実はしっかりと知っておき、その上で今取れる対策を取っておくことが大切です。

双極性障害は適正な治療によって気分の波を抑えてあげれば、健常の方とほぼ変わりなく生活することが可能です。
双極性障害を持ちながら、第一線で仕事をしている方もいらっしゃいます。
また最近ではその世界で大きな業績を挙げている有名人が「自分は双極性障害だ」と公表されることもあります。
ここからも、しっかりと治療していれば普通の生活をおくれるという事が分かります。

むしろ怖いのは、双極性障害の発見が遅れてしまうケースです。
すぐに双極性障害だと気付いて治療していれば問題なかったのに、躁状態を病気だと気付かずに気持ちが大きくなって莫大な借金をしてしまったり、
うつ状態を病気だと気付かずに仕事や人付き合いをやめてしまったりしてしまうと、
その人のその後の人生に大きな問題が生じてしまう可能性が高くなります。

そのため、双極性障害発症のリスクが高い方は、そのことをあらかじめしっかりと認識しておき、
万が一発症してしまった時にはすぐに適切な治療が導入できるような体制を整えておくことが大切です。

また繰り返しますが、「双極性障害の遺伝がある場合は、双極性障害を発症しやすくなる」というのは事実ですが、
「双極性障害の遺伝がある場合は、双極性障害を必ず発症する」というのは間違いです。

双極性障害と遺伝については、「双極性障害(躁うつ病)に遺伝は関係あるのか」にて詳しく説明しています。

Ⅱ.ストレス

ストレスも双極性障害の発症に間違いなく関わっています。

といってもストレスを受けたら誰でも双極性障害を発症してしまうわけではありません。
ストレスは生きていく中で誰もが受けているものですから、もしストレスだけで病気が発症してしまうのであれば、大変なことになってしまいます。

双極性障害における「ストレス」という原因は、

元々遺伝がある方にストレスが加わって発症する
明らかに過大なストレスが加わって発症する

というケースが多く、一般的なストレス単体で双極性障害を発症してしまう事は稀です。

ストレスを受けることによってどのように双極性障害発症への至るのか、その機序は明確にはなっていません。
しかし近年、ストレスを受け続けると脳神経細胞が障害を受けるという事が分かってきています。

ストレスで精神が不安定になるのは「気持ちの問題」だけでなく、実際に脳に損傷が生じているという事です。

例えば、ストレスでうつ病が発症する機序を説明する仮説として「HPA仮説」という考え方があります
。簡単に説明すると、ストレスを受けると「コルチゾール」という血糖などを上げるホルモンが多く分泌されるようになります。
過剰なコルチゾールは神経に対して毒性を持つことが知られており、
これによって中枢神経が障害を受けることがうつ病の原因になるのではないかという考えがHPA仮説です。

これと同じように、大きなストレスを受ける事で脳神経が何らかの障害を受け、
それによって双極性障害を発症してしまうという可能性は十分考えられます。

Ⅲ.環境

環境というのは、前述の「ストレス」とも大きく関連する事ですが、環境も双極性障害の発症に影響すると考えられます。

双極性障害の再発率を高めるものとして、HEE(High Expressed Emotion)があります。
これは「感情表出が高い」という意味で、双極性障害の家族の方が患者さん本人に対して、
「批判」「敵意」「情緒的な巻き込まれすぎ」という類の高い感情表出があると、双極性障害の再発率が4~5倍も高まってしまうというものです。

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診断基準から強迫性障害をチェック

それでは診断基準から強迫性障害をセルフチェックしてみましょう。強迫性障害は、比較的分かりやすい疾患であるため、
診断基準もそこまで難しいものではありません。

これらを全て満たす場合、診断基準的には強迫性障害の診断となります。

それでは診断基準の項目を1つずつ紹介していきます。

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自殺願望と似た症状について

「死にたい」という気持ちが生じてしまう症状は自殺願望以外にもいくつかあります。

具体的には「希死念慮」や「自殺企図」などがあります。

これらは自殺願望とどのように違うのでしょうか。
また「死にたい」という気持ちが生じる症状をこのように別々に分けている意味は何なのでしょうか。
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自殺願望とは うつ病をはじめとした精神疾患で認められる症状の1つ

自殺願望(じさつがんぼう:Suicidal Thought)は、「自分の手で自分の人生を終わりにしたい」と強く考えてしまう事です。
自殺念慮(じさつねんりょ)と呼ばれる事もあります。

うつ病をはじめとした精神疾患で認められる症状の1つで、治療者や周囲の方々が決して見逃してはいけない症状の1つでもあります。
また精神疾患にかかっていなくてもショックなことや強い精神的ストレスが持続的にかかれば生じる事もあります。

自殺願望は精神的に不安定な日々が続き、将来を絶望する事で生じます。
この自殺願望を放置してしまうと、症状は更に悪化し、患者さんが自ら命を断つ事を実行してしまうという最悪の事態に進行してしまう可能性もあります。

この最悪の事態を防ぐためには、医療者や周囲の方々が当人の自殺願望を見逃さない事が大切です。
また患者自身も自殺願望を自分の中に溜め込まず、信頼できる人に打ち明けられる環境も重要です。

まずは自殺願望とはどのような症状なのかを説明します。
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希死念慮と似た症状について

「死にたい」という気持ちが生じてしまう症状は希死念慮以外にもいくつかあります。

具体的には「自殺念慮(自殺願望)」「自殺企図」などがあります。
これらは希死念慮とどのように違うのでしょうか。
また「死にたい」という気持ちが生じる症状をこのように別々に分けている意味は何なのでしょうか。
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希死念慮 なぜ死んではいけないのか

希死念慮は「死にたい」と考え続けてしまう症状だとお話ししました。

この症状はあらゆる精神症状の中でももっとも注意すべき症状の1つです。

では、なぜ「死んでしまいたい」と考えてしまう事が問題なのでしょうか。
一般的な倫理観として「死にたいと考えるのは良くない事」という事は多くの方が賛同するでしょう。
しかしそれがなぜいけないのかを説明できるでしょうか。

実際、患者の中には「先生は死ぬなというけど、そんなの本人の自由じゃないか」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
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希死念慮とは

希死念慮(きしねんりょ:Suicidal Ideation)は、うつ病をはじめ多くの精神疾患で認めうる症状の1つです。
そして数々の精神症状の中でも、もっとも見逃してはいけない症状の1つでもあります。

うつ病をはじめとした精神疾患は治療に時間がかかる事があります。
そしてその経過中でもっとも生じさせてはいけないのが、患者が自ら命を断ってしまう事です。
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憂鬱って何?

私たちは日常的に「ゆううつだなぁ」という言葉を使います。

でもこの「憂鬱(ゆううつ)」というのはどういう気分を指しているのでしょうか。

一般的な使われている「憂鬱」の意味は、

「気分が晴れない事」
「気分が沈んでいる事」

などと説明されます。

もちろんこれは正しいのですが、ここではもう少し深く「憂鬱」という状態について考えてみましょう。
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パニック障害 中途半端に治療を終わらせないこと

治療を始めると、直線状に綺麗に治っていく。

このような経過は理想的なものではありますが、実際にはこんなに綺麗に治っていく人は滅多にいません。

多くの症例では、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、少しずつ少しずつ改善していきます。
昨日より今日の方が調子が悪い、なんてことはよくあることです。
しかし1か月単位などの長い目でみて、徐々に改善していくのが典型的な精神疾患の経過です。
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快適な睡眠を得るために意識すべき寝室環境 その2

寝室の照明にも気を付ける必要があります。
当たり前のことですが、電気を付けっぱなしで睡眠に入れば、睡眠の質は浅くなってしまいます。

しかし電気を付けたままうっかり寝てしまう、という例は少なくありません。
寝床で本を読んでいたり、スマホをいじったりしている場合は電気を付けたままの事が多いようです。
そのまま、いつの間にか眠ってしまったら、電気は付けっぱなしです。
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非定型うつ病の方との接し方 その4

うつ病の方への接し方は、ある程度知られるようになってきましたが、
非定型うつ病の方への接し方はまだまだ世間には良く知られていません。

非定型うつ病の方とはどのように接すればいいのでしょうか。

非定型うつ病という疾患は、生活リズムが乱れやすい疾患であり、
また生活リズムの乱れが病状を悪化させやすい疾患でもあります。

そのため、「生活リズムを規則正しくすること」というのは、非定型うつ病の治療における鉄則です。
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